最近、良太の使っていたデスクトップがお釈迦になったのを機に、社内のPCを一新し、良太も新しく最新のラップトップを買ってもらったので、ちょっと使い勝手がよくなった。
Windowsの最新OSやサーバを選んでネットワークを組んだのは良太だが、鈴木さんは変わりすぎてわからないと、まだ以前のOSを愛用しているが、サポートが終了するまでに新しいOSに慣れないとと奮闘している。
「でも困っちゃうわね、まだまだずっと夏物が活躍しそうだし、まさか衣替えの頃までには暑さもおさまるわよね」
鈴木さんは、オフィスではカーディガンを羽織っているが、中は夏のワンピースだ。
「そうですねー」
外周りは一応上着を着るが、良太も正直半そでシャツ一枚で動きたいところだ。
「良太ちゃん、鼻声。夜更かししたでしょ? あたしより早く来てるってことは、まさかここで徹夜?」
「はあ、夕べ、ニューヨークにメールするのを忘れてて、夜中気づいてやってたら、いつの間にか寝ちまってて」
「もう、だめよ、無茶しちゃ。今、温かいお茶いれるわね」
「すみません~」
ぐす、と鼻をすする。
やばい、な、クスリ飲んでおこう。
今時風邪なんか引いちゃいられないぜ。
昨夜は久しぶりに早く上がれたので、部屋に戻ってテレビで野球を見ていたのだ。
それでメールのことをころっと忘れてしまった良太は慌ててオフィスにやってきてそのままというわけだ。
中と外との気温差があり過ぎるのも要因だ。
ずっと続いている猛暑に身体がバテ気味なのは良太だけではないだろう。
にしても関西タイガースはここにきて優勝を目前に足踏み状態だ。
三連敗してホームに戻った昨日は、沢村の二ホームランも飛び出し、久々に快勝した。
「やったぜ! 沢村!」
部屋で一人思わず叫んだり。
沢村をメチャ敵対ししていた昔なら、考えられなかったことだが、この夏大阪で一緒に飲んでからというもの、ずっと友人だったかのような感覚で沢村を見るようになった。
けど、『パワスポ』の出演交渉とはまた別の話だよな。
まだ、打診している段階だ。
ただ、沢村が出る出ないで、番組の視聴率も大きく左右されるわけだから、ここはとにかく何としてでもOKしてもらわなくてはならない。
知り合い、を利用して交渉する、というのが良太としてはあまり好きではないのだが、仕事である以上、そんなことも言ってられない。
「良太、ニューヨークは何て言ってきた?」
鈴木さんに入れてもらった温かいお茶をすすっていると、工藤がやって来た。
「あ、今、返事待ちです。でも感触はよかったから、OKだと思いますけど」
「そっちは任せた。おい、小笠原はまだか?」
「さっき、真中から三十分遅れますって電話入ってます」
「あのガキ……」
工藤がきりきりしているのは、来年一月からの連ドラのスポンサーと交渉が難航しているせいでもある。
この夏の連ドラは各局とも軒並み視聴率が低迷した。
工藤のプロデュースによるドラマが二つあり、一つは最低ラインは逃れたものの、スポンサーが「敏腕プロデューサー工藤の力も落ちたかね」などと文句をつけてきた。
かつて、鬼の工藤と称されたこの男の担当する番組は常にトップクラスの視聴率を誇っていた。
だが、工藤自身は視聴率を度外視したドキュメンタリー番組の方が好きなようで、同期の下柳と一緒に地道に作り続けている。
「フン、視聴率なんかクソ喰らえだ!」
と喚きつつも、とりあえず視聴率の取れるものを作らねば、自分たちの作りたい番組も作れない、と工藤もわかっている。
この秋のドラマは出だしはそこそこの視聴率をあげているが、来春のドラマでははっきりとした数字をあげるべく奔走しているのだ。
「すみません、社長、遅くなりまして……」
マネージャーの真中が、小笠原を後ろに従えてようやく顔を見せたのは、十一時に近かった。
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