夏を抱きしめて14

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 後ろできっちり長い髪を結わえている元気は堅気には見えないし、将清を筆頭にイケメン揃い。
 しかも内五人が独身とくれば、二次会でも新婦のご友人たちの注目度は更に上がった。
 佐野は元気に会えたことをほんとに喜んでいるようで、紹介された可愛い奥さんもよく笑う。
「驚くなよ、実は、あの超有名なロックグループGENKIのオリジナルメンバーなんだ、元気は」
 銀行員になってもう四年目、役職も与えられているはずの佐野だが、まるで当時と変わらない。
 育ちがいいというのだろうか、素直で純朴なまま、頬を高潮させて自分のことのように、新妻に自慢している。
「え、ほんと? 今はやってらっしゃらないの?」
「ええ、郷里で親の残した店をやってます」
 元気はことさら強調する。
「今はロック界じゃ、幻のギタリストっていわれてるくらい、すんごいんだ、元気のギターは。だって、ほら、GENKIって実は、元気の名前からきてるんだぜ」
「何だよ、その、幻の何とかって」
「そう、幻のギタリスト、元気、って、ロック界じゃカリスマ的存在よ」
 苦笑いする元気の横から、ワイングラスを持った毛利がやってきて付け加える。
「おい、いい加減なこと、言うなよ」
 元気は将清に怪訝な顔を向ける。
「知らぬは当人ばかりなりってな」
「何だよ、それ」
 元気は眉を顰めた。
 郷里に戻った時にその世界からはきっぱり足を洗ったつもりだった。
 だから、今更GENKIのことを言われるのもあまり歓迎しない。
「お前さ、冬あたりに下北沢のライブハウスで何とかってバンドとセッションしただろ? しかもそこへ一平が現れてお前をかっさらったと」
「何で、そんなこと……」
 将清が知っているのだと元気は訝しむ。
「そん時の海賊版ライブCDが密かに流れてて、ここんとこかなり売れてる」
「ウッソだろ?」
 元気には寝耳に水の話だった。
「GENKIからすれば、お前はメンバーじゃないから阻止しようがない。一緒にやった何とかってバンドはお陰で客の入りがいいんで、文句のいいようがない」
「お前、スポーツ誌の編集だろ? 何でそんなこと」
「でなくても自然と耳に入るよ。俺も地味な美術雑誌の編集だけど」
 江川までが話に割り込む。
「だから、みっちゃんとか、Gコーポレーション社長の浅野がその情報を懸命に抑えてるって話。お前のために」
「何で俺のためだよ?」
「業界内のプロダクションがお前を探しているって噂があって」
「はあ?」
 ますます話がこんがらがってくる。
 新郎新婦までも興味深々で将清と江川の話に耳を傾けている。
「豪の作品展に、お前の写真、あっただろ?」
「豪の? ……ああ」
 将清の口から今日は遠ざけていた豪の名前が出て来たことで元気は俄かに眉を顰めた。
 昨年末最近売り出し中の坂之上豪の作品展があり、元気も一度上京して途中まで見たが、今話題に上がっている元気の写真は、写真集で見ただけで、まだ実物にお目にかかっていはいない。
「あれが幻のギタリスト、元気と同一人物だという噂が流れて、そこに目をつけたいくつかのプロダクションが本人を探してるとか」
 将清は淡々と続けた。

 


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