出張、ということになっているらしい。
行く先は急だし、ここしかないだろう、軽井沢の別荘だ。
翌日から平造は墓参りをすると言って、もう誰も身寄りのない郷里の水戸に宿を取って出かけていった。
良太にとっては思いがけず、正真正銘、工藤と二人、いやナータンと三人の夏休み。
「ちょっとは、俺、愛されてるのかな……」
呟いてみる。
「何か言ったか?」
珍しく料理をしようとキッチンに立っている工藤に、「手伝いましょうか」と良太が言うと、案の定、あれを切れ、これをゆでろ、とくる。
「俺一人でやった方が早いんじゃねー」
「いいから、さっさとしろ」
シメジやマイタケなどのきのことベーコンを使ったパスタと大根サラダは、普段料理などしない二人で作ったにしては上出来だった。
「このワインも結構いけますね!」
飲みやすい白ワインでほろ酔い加減の良太の頭からは、何やら色々考え込んでいたこともどこかへ行ってしまっている。
こんなにのんびりしている間にも、あくせく働いているだろう小笠原やアスカらに、ちょっぴり申し訳ない気もする。
鴻池もあれで引っ込むような男じゃなさそうだし。
心配事もつきないけれど。
ま、いっか。
今だけは、下界のことは忘れて、ちょっち幸せ気分。
「すんげぇ、月、明るい」
窓から夜空を見上げて良太は呟いた。
工藤はそんな良太を見てクスリと笑う。
「ああ、何、笑ってんだよぉ! どうせ単純なやつとか思ってんだろぉ!」
工藤は空になったグラスをテーブルに置くと、立ち上がって窓辺の良太に近づいた。
「良太」
良太の首筋に工藤の指が触れる。
少し潤んだ目が自分を見上げると、工藤はゆっくりとその唇をふさいだ。
そのまま良太のTシャツを捲り上げた工藤は少し骨ばった身体を摩りながら、もつれ合ったまま静かに床の上に倒れ込んだ。
工藤の指に素直に熱を帯び始めた良太をしばらく喘がせると、邪魔なTシャツやジーンズを剥ぎ取り、脚を掴んで腰を入れた。
「あ………!」
工藤が動くたびにせり上がってくる甘い刺激に良太は声を抑えられない。
工藤に与えられる愉悦に良太はただ翻弄されて断続的に声を上げる。
深く繋がったままひと際甘い吐息を最後に意識を手放した良太に工藤は口付けた。
明け方、ふと目を開けた良太は、工藤に擦り寄るようにしてベッドにいる自分に気づいた。
夏のほんのひとときの幸せか……。
俺はやっぱりセミだ………。
良太は心の中で呟くと再び目を閉じた。
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