真夏の危険地帯22(ラスト)

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 ここのところ猛暑続きで暑いなんてものではなかったが、土曜日に行われたGENKIのライブはいつも以上に盛り上がった。
 さらにアンコールで現れたサプライズゲストには、オーディエンスは沸きに沸いた。
 みっちゃんの思惑通り、ファンはいつサプライズゲストがまた現れるかと毎回ライブに足を運び、そしてご褒美のようにこうしてマスクの元気を投入することで、一層歓喜を味わわうことになるのだ。
 しかもボーカルの一平がマスクのギタリスト元気にやたらと絡むので、そのたびに悲鳴や絶叫の混じった歓声が沸き起こる。
 これはバックステージで久々豪とを顔を合わせた一平が豪を悔しがらせるためにわざと元気の肩を引き寄せたりするわけで、豪は豪で一平の挑発に簡単に乗せられて頭に血が上ってしまうのだ。
 元気も豪と一緒に来ていることで、何を気にすることなくギターに集中できて、自分でもこれだと思える音を出せたことに感慨もひとしおだった。
「すっげえ、いい!」
 バックステージでは、悔しさもそこそこに豪が叫ぶ。
 紀子と優香は抱き合って再会を喜び、東は初めて足を踏み入れた巨大なステージや観客のすごさに圧倒されていた。
 八時にアンコールが終わるとまだ観客のどよめきが収まらないうちに、元気と東、紀子はスタンバっていた豪のSUVに乗り込んだ。
 車は湾岸道路をしばらく走り、やがて東関東自動車道に乗ってから約三十分ほどでホテルに到着した。
 それから四人でホテルのレストランで夕食を済ませた後、それぞれの部屋に引き上げた。
 どうせみっちゃんに経費で押し付けるつもりだったので、元気はエグゼクティブツインを四部屋取ったのだが、十二分に寛げる広い空間だ。
 女子との買い物がどれだけ恐ろしいものかを体感した後に、四時頃にはスタジアムに向かい、ライブは夢中であっという間だったものの、車の中で疲労はどっときたようで、元気はホテルに着くまで眠っていた。
 部屋に戻ると、元気は広いバスタブに湯を張ってしばらく浸かり、うとうとし始めて慌てて風呂から上がってもう寝ようとベッドに向かおうとしたところでチャイムが鳴り、ドアがノックされた。
 テーブルに置いた携帯もメッセージか電話かの通知でチカチカしている。
 豪なのはすぐわかったが、いい加減疲労困憊状態で豪の相手は遠慮したかった。
 放っているとまたチャイムとドンドンとノックではなく叩いている。
 よもや一平とかではないだろうと一応ドアに近づいて、誰だと聞いてみる。
「俺」
 仕方なくドアを開けた元気が「俺は今日めいっぱい疲れて………」と言う間もあらずこそ、そのまま豪に押し倒されていた。
 これでもかというほど長いキスの後、「……サカりやがって! 俺は疲れてるって言ってるだろ!」と元気は精いっぱい喚いてみる。
 のだが。
 頭から水をかぶってもなお、ライブの興奮冷めやらず、既に獣状態と化している豪には人間の言葉は通じないらしく、豪はそれこそものも言わずにバスローブなどとっくに脱げてしまった元気を肩に担ぎ上げるとベッドに放って組み敷いた。
 それでもそのまま食らいつくようなことはせず、小憎らしいことに最近豪は元気のいいところを熟知していていいように喘がせる。
 元気が頭の中から溶け始めた頃に中へと押し入って追い上げ、しまいには豪を欲しがって泣かせたあげく仕留めにかかるという策を弄するようになってきた。
 翌日はディズニーランドなど絶対無理だと主張する元気に、豪はルームサービスで朝食をとらせ、引き摺るように連れ出して車に乗せた。
「俺、蒸気船でゆっくり河クルーズとかしてるから、お前ら何たらマウンテンとか、行ってくれば」
 ディズニーランドに入っても、蒸気船すら乗りそうにない元気に「じじむさいこと言ってないで行くわよ!」と今日も朝から元気が有り余っている紀子がその腕を引いて何たらマウンテンに乗るはめになる。
 二人の後ろをついて回るお一人様状態の豪は、さすがに文句を言える立場ではないことは重々承知しているらしい。
 いざ何年ぶりかで乗ってみると何たらマウンテンもそれはそれで面白く、結局また紀子に連れまわされた元気だった。
 豪はひたすら元気の機嫌を取りつつ、降りる時は姫君扱いで二人に手を貸し、飲み物を運び、下僕と化していた。
 銀座でこちらも好きな絵を堪能した東をピックアップし、豪はお勧めの店のディナーに三人を連れていくと、高そうな店でもきっちり支払いを済ませた。
「さすが、太っ腹!」
 東が言った。
「みっちゃんに請求書回せばいいだろ」
 元気が提案するが、「いや、これは俺のケジメなんで」と頑なにそれを拒否した。
 

 帰りの車の中で元気は家に着くまでぐっすり眠り込んでいたのは言うまでもない。

 


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