「何か、でも、いいよねぇ、高校生とかに戻りたいなあ」
万里子がため息交じりに言った。
「万里子さん、高校生の時からドラマに出てらしたわね」
鈴木さんが言った。
「そうなんだ。一年の時だけよ、高校生活満喫できたの、二年からこの世界に入っちゃったから。今でも思うのよ、あの時、スカウトの人に断ってたら、また違う人生だったんだとか。そしたら、ごく普通に高校生やって、大学も行って、普通にOLとかになって、普通に結婚してたなって」
「そうね、誰にでも岐路ってあるかもしれないわね」
鈴木さんもしみじみとほほ笑んだ。
いやいや、鈴木さんの説でいくと、その時から、俺の運命の歯車が回り始めた、ってんじゃないよな?!
いつもの良太であれば、工藤と俺はやっぱ運命で巡り合ったんだ! とか、メチャ喜んでいそうなのに、と自分でも思う。
だが、あまりな偶然に、戸惑ばかりだ。
そういえば、もう思い出したくもないが、工藤がはめられて被疑者にされた事件だけど、関与したインテリヤクザがアジア圏の麻薬に厳しい国で大麻所持で逮捕され、終身刑かも知れないという新聞記事を読んだ時、ふと思ったのだ。
もしこの会社に入社していなければ、ひょっとしてその終身刑が自分だったかもしれない!
ぞっとした。
それはもしあの時、工藤に会っていなければだが、実はもう高校二年のあの時に決まっていたとか?????
いやいや、人生ニアミスなんてもしかしたら誰でもあることかもしれない。
ただそんな袖すり合ったくらいのことなんか、覚えていやしないのだ。
第一工藤だって、あの時顔を合わせたことがあるなんて覚えてもいない。
たまたま、俺が思い出しただけで。
岐路って、この先まだあるんだろうか。
そうだ、あの事件だって、千雪さんらがアクションドラマ並みに動いてくれたお陰で工藤が冤罪にならないで済んだのだ。
まあ、それがうまくいかなかったとしても、おそらくあの、工藤の影のボディガード波多野が、最終手段を用いて何とかしたのかもしれないが。
やっぱりぞっとする。
工藤がもし、帰らなかったらとか。
もしこの先、岐路があったとしても、工藤と離れるとか、絶対いやだ。
何だか結局、そこに落ち着いてしまった結論に、良太は一人笑った。
「やだ、どうしたの? 一人で思い出し笑い?」
万里子が良太を見てにっこり。
「え、まあ、分岐点とかやっぱあるのかなって」
「そうねえ、でもそれってあとから思うことでしょ? そこで間違った選択をしたとしても、何とかいい方へ軌道修正していきたいよね」
「そうですよね!」
万里子の言葉に良太は大きく頷いた。
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