良太もちょっと可哀そうに思うのだが、何と言って声をかけていいかわからない。
「ちょっと、良太、万里ちゃんに振られた可哀そうなあたしに、俺でよければ、とかくらい言えないの?!」
とんだトバッチリだ。
「え、ああ、じゃあ、俺でよければ」
良太は棒読みのように口にした。
「心がこもってなーい!」
「俺に当たらないでくださいよ」
良太も不服そうに言い返す。
「何なら、俺も今夜は暇だぞ」
ニヤニヤと良太の後ろから声がかかる。
「やあだもう、工藤さんの苦み走った顔見ながらディナーとか、ないわー。あ、でも、じゃあ、工藤さんに請求書回すから、秋山さん、どうせ一人でしょ? ご飯行こ?」
アスカが毒を吐いて立ち上がった。
「しょうがないですね。それじゃ、お先に失礼します」
秋山は工藤と良太に言ってアスカを伴ってオフィスを出た。
「せっかく工藤さん暇なのに、良太のお邪魔虫にはなりたくないわよ」
階段を降りながら、アスカはボソリと秋山に行った。
「ま、そうですね。で、どこ行きます?」
「そうねぇ、最近、ちょっと評判のイタリアンにしようよ」
「お寿司かお肉じゃないんですか?」
「気が変わったの」
そんなやり取りは良太にはもう聞こえなかったが、秋山とアスカは一見似合いの恋人同士のようにずっと一緒にいる。
二人ともそういう雰囲気ってないんだろうか?
ついつい老婆心ながら、そんなことを考えてしまう。
まあ、でも、それ言ったら、佐々木さんと直ちゃんなんか、絶対恋人同士にしか見えないもんな。
良太は美貌のクリエイターとそのアシスタントの顔を思い浮かべる。
実際は家族のようなものみたいだけど。
俺と工藤なんか、もろ社長とその部下以外ないしな。
「じゃあ、良太、メシ、行くか」
フンとほくそ笑んで二人を見送った工藤だが、アスカの余計なお世話なところは見抜いている。
「はい。どこ行きます?!」
待ってました、とばかりに良太は振り返った。
「何が食いたい?」
「え、うーん、麻布住吉とか?」
西麻布にある割烹料理の店である。
「肉がっつりとかじゃなくていいのか?」
「あそこの肉もしゃぶしゃぶですんげ美味かったじゃないですか」
「フン、ま、いいさ」
工藤は苦笑する。
実際、ゆっくり酒が飲みたい気分だったので、フレンチだのイタリアンだの肉がっつりだのは遠慮したかった。
良太もそこのところはわかっているのだろうが、良太は何でも美味そうに食べるので、そこはあまり気にしていない。
「ちょっと俺、ニャンコらにご飯やってきます」
スキップしそうな足取りで良太は自分の部屋へ向かった。
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