幻月11

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「工藤はその通りのことを取り調べでも話したが、端から工藤を犯人と決めつけている警察は耳を貸さないようだ。なので黙秘している」
「六本木のクラブ『ベア』も松下美帆も工藤さんの周りに記憶にありませんね。少なくともチーママの証言というのは勘違いか、偽証でしょう」
 ややあって秋山が断言した。
 良太は秋山の話に、当然だと思う。
 というより、工藤がはめられたのであれば、その松下美帆と付き合っていたという事実もないのだ。
 良太は拳を握りしめた。
「おそらく……工藤の友人として言えば、この手の女に工藤が興味を持つとは思えない。何らかの事件に巻き込まれたか、何らかの理由ではめられたか、どちらかだろう」
 小田が言った。
「警察はそのクラブのママとの痴話喧嘩で工藤さんが殺したとかミスリードされているうちは、真犯人には辿り着けない、いうことです。つまり初動捜査の段階で後れを取っているわけです。こっちは工藤さんははめられたという大前提で動きますから先に真犯人に辿り着きますわ。ただし、もう迅速に動かんとあきまへん」
 いつになく千雪の言葉がきつかった。
「良太、パソコン、ちょっと貸してや」
 良太は慌てて自分のノートパソコンを千雪に渡した。
 千雪は、パソコンに自分の携帯をつなぐと、画像データを次々とテレビの大画面に映し出した。
「これが殺された六本木のクラブ『ベア』の松下美帆」
「被害者の美帆のことは、捜査一課の渋谷さん脅して聞き出したんで、『ベア』の周辺、ダチに探ってもらってます」
皆が一斉に千雪を見つめた。
「『ベア』は松下美帆がオーナーママいうことになってますけど、中堅建築会社社長の友成陽介五十七歳が店の資金二千万出してて、こいつがママの男やいう噂らしいです」
 千雪は店の外観や、店内の画像、それから友成の写真を画面に映し出した。
「こっちはセントラルハイアットホテルのバー『スマイル』と、そのバーテンダー田島、スタッフの加藤、レジの井坂、このスタッフの加藤が工藤さんを松下美帆と一緒にホテルの部屋に運んだいうことです」
『スマイル』の店内、スタッフらの顔写真がずらりと画面に映し出された。
「いったいいつの間にこんな情報を」
 小田も驚いている。
 怖ろしく短時間にこれだけの情報を集められるのだから、工藤が千雪に最初に連絡を入れたことを良太も納得せざるを得ない。
 秒単位で後れを取っていられないのだ。 
「工藤さんから動画を受け取ったのは九時を回った頃やったから、すぐにこれらの店にダチをやったんです。警察は工藤さんを犯人と決めつけてますし、あいつらが裏取りするよりも早く動いてます」
 きっぱりと千雪が言った。
「何だか千雪さん、警察を目の敵にしてるみたいだね?」
 秋山が言った。


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