幻月12

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「そら、あんなアホな連中に任せとったら日本は冤罪天国になってまいますわ」
 さらにきつい千雪の言葉に、そういえば昔、千雪は冤罪で逮捕されかけたと聞いたのを良太は思い出した。
 時々千雪はあの綺麗な顔で、恐ろしいことを平気で口にすることも、良太は知っている。
 その時、オフィスのドアが開いて入ってきたのは、千雪の相棒とされる綾小路京助だった。
 良太は思わず立ち上がって、京助を認めるとまた座り直した。
「ホテルの方は、もう店じまいしたが、警察が来て話を聞いてったぜ」
 どうやら『スマイル』を調べていたのは京助だったようだ。
「型通りの聞き込みしかしてないし、あれで犯人なんか見つかるわきゃないだろ。刑事が帰ってから、そいつに聞いたら、工藤を女と一緒に部屋に連れてった加藤ってのが、女とちょっと話したってよ」
「何を話したて?」
「女が、工藤のことを自分の男だみたいな口ぶりで、酒に弱くてすぐ酔っぱらうとかって」
 千雪の問いに京助が答えると、小田が笑った。
「グラス一杯で工藤が酔うとかあり得ない。女が薬を入れたんだろう。一応、工藤の血液検査はするようだが、おそらく自分で飲んだとか警察は言い出しそうだな」
「まあ、工藤さん、目の敵にしとる連中やから」
 千雪の言葉に、良太ははっとした。
 そうだ、警察は工藤のことを鬼の首を取ったかのように犯人だと決めつけているに違いない。
「それと、工藤にかかってきた電話を取り次いだのもその加藤ってやつで、男の声で名前は名乗らなかったってよ。刑事さんらは、そんなことも聞きやしなかったみたいだぜ」
 フンと京助は鼻で笑った。
「多分、その加藤ってやつは事件とは無関係だろうとは思うが、ホテルの連中ももう少し突っ込んで調べてみる」
「うちでもホテルとクラブの周辺で聞き込みをする。誰か何か見ているかもしれん」
 小田が言った。
 凶器を握って現場で逮捕されたことを考えると、工藤がはめられたという明確な証拠か真犯人を見つける以外に工藤を釈放する手段はないと思われた。
 良太は小田や千雪らの話を口を出すこともほとんどなくじっと聞いていた。
 誰かにはめられたのは百パーセント確かだ。
 少なくとも良太の中では。
 おそらく千雪も同じなのだろう、あの素早い行動力は警察の無能さを一刀両断するくらいの怒りが感じられる。
 良太も無論そうだが、怒りより前に工藤のことが心配だった。
 仕事ができない上に、くだらない警察の尋問を受けなくてはならないのだ。
 工藤は怒り心頭だろうが、できる限り工藤のスケジュールを確認してこちらで動かなくてはならない。
 

 


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