「久々、高速なんか走ったからちょっと疲れたくらいだ。どうなっとるのか、話してくれ」
老体に鞭打つとはこのことだ。
良太は今までの経緯とこれからどうするかをかいつまんで平造に話した。
「平さん、お久しぶりです」
京助と二人、先ほどからひそひそと話し込んでいた千雪が平造を見てにっこり笑った。
「皆さんも、社長のために申し訳ないことです」
平造は頭を下げた。
「とんでもない。いつも工藤さんにはお世話になってばっかやし、こんな時こそ力にならせてもらわんと」
出会ってからほぼ十年来の付き合いになる老人に、千雪は労りの目をむけた。
「ちょっと休みませんか」
良太はアスカが持って来てくれた差し入れをテーブルに広げて、お茶を用意し、皆を呼んだ。
「我々はまず、社員に通達した上で、きっちり仕事をやってもらわないと。それから監督や局関連、俳優陣や業者のみんなにどう説明するかだが」
秋山が言った。
「仕事の関係者には、動揺を防ぐためにも万が一容疑が固まったらでいいかと思いますが。話すべき時が来るまでは、仕事を滞らさないことが最優先かと」
良太の言葉が案外冷静なのに、皆が注目した。
「わかった。では工藤さんの仕事を俺と良太で分担するとして、社員には明日、オフィスに寄れる者には寄ってもらって、都合がつかない場合には口頭で伝えるしかないか」
「そうですね。昨日のMBCの紺野プロデューサーとの打ち合わせは来年秋のドラマということですが、工藤さんにとにかく一度会って、話を聞きます」
会わなければ。
何としてでも。
この会社にも、仕事にも、周囲の人間にも、全てに関わってくることなのだ。
警察なんかに、カモネギ感覚で工藤を犯罪者にされてたまるかよ。
良太は心の中で静かに叫んだ。
「わしも一緒に行こう。社長にはわしも会わねばならん」
平造も強い口調で言った。
「皆さんは、いつも通り仕事をされた方がええ思います」
千雪が言った。
「動くのは俺らの方が動きやすいし。信用できる仲間もおるよって」
「よろしくお願いします」
良太は千雪に深く頭を下げた。
今初めて、千雪とその相棒である京助と知り合いであることに良太はひどく感謝した。
「何かわかったら、知らせてよね」
アスカが言った。
「とにかく司令塔は良太やから、情報は良太に報告するわ」
「はい」
秋山と良太は工藤と仕事のスケジュールを照らし合わせて、どちらが受け持つかをたったか決めていった。
やがて秋山がアスカを送って行くと言って帰っていった。
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