「で? 勝っちゃんは誰に片思いなのかな?」
面倒な相手に聞かれたな、と勝浩は眉根を寄せて検見崎を見た。
「そんなこと、あなたに言う必要ないでしょ」
「いやあ、実は美利ちゃん、多分勝っちゃん狙いだろうってわかってたんだ。ついにって思ったのにな。勝っちゃんがそんなつらい思いに心を痛めているとはつゆ知らず。誰にも言えない秘密の恋心なのねん! しかも不倫か?」
勝浩は検見崎をきっと睨みつける。
「いや、茶化しているわけじゃないって。だってさ、話してしまうと心が軽くなる、…ってあるじゃん?」
検見崎は、ん? と勝浩の顔を覗き込む。
「俺の知ってるやつ? ここの人間? まさか、垪和とか?」
勝浩は首を横に振る。
「じゃあ、いいじゃん、話してみ? おにーさんが聞いてあげるから。君のつらい心のうちをさ」
そうかもしれない。
前に進むために、あの人への思いを封じ込めたはずなのに、いつまでたっても後ろを振り返ってしまう自分がいやだ。
口にすることで、何かが変わるだろうか?
「面白い話じゃないですよ。高校の時の先輩で…」
「ほう?」
俄然、検見崎の目が輝き出す。
「いい加減しつこいですよね、俺。とっとと忘れればいいのに」
「告らなかったって?」
「だからその人には、もう好きな人がいて」
「それでもいいんじゃない? 当たって砕けても。そういうの、カッコ悪いとか思ってるでしょ? シツコイとかいうし」
茶目っけたっぷりの検見崎の科白に勝浩は笑う。
「そうかもしれませんね。でも…」
「でも?」
「結局、エゴなんですよ。俺じゃない、なんて言葉なんかいらない、って」
「うわ、情熱! そこまで勝っちゃんに言わせるその人に会ってみたいな。すんごい美人? やっぱし」
勝浩はまた頭を横に振る。
「人のことからかってばっかで、ムカツクこともされたし、ろくでもない人でしたよ」
そう、あれは二年生の春だっけ。
急に俺に甘いこと言って近づいてきて、妙だなとは思ったけど、ちょっとは嬉しかった。
優しかったから。
けどやっぱ嘘っぱちで、俺を落とせるかどうかで、賭けなんかしてたんだ。
そこで告ったりしてたら、いい面の皮だ。
どんなに俺が傷ついたかなんて、あの人はてんで知らないだろうけど。
本当に好きだったから。
「勝っちゃん?」
古い思い出に入り込んでいた勝浩は、はっとして顔をあげる。
「俺のこと? それ」
「え?」
訝しげに聞き返すと、検見崎は鼻の頭を指でこする。
「人のことからかってばっかで、ムカツクこともするし、ろくでもないやつって」
途端、勝浩は笑い出す。
「ほんと、条件ぴったり」
「そこまで笑うこたあないでしょ。よっしゃ、じゃ、帰るか。ビッグ、ヨーク、一緒に来るか? と、ロクもな」
検見崎の言葉がわかるらしい、ビッグとヨークは喜んで彼に従う。ロクもそわそわしている。
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