ACT 2
地下へ続くコンクリートの階段を降り、ドアを開けると、まず熱気に煽られた。
検見崎と二人、スタッフに案内されて奥のテーブルへと向かう。
「わあ! タケちゃん、えらい! ちゃんと堺くん連れてきてくれたんだ」
両手をひらひらといっぱいに広げて笑顔を向けたのは同じ編集部でバイトをしている女性陣の一人、岩崎だ。
「合コン、な感じがするんですけど、これって」
勝浩は隣に座る髭面の男を見もしないでボソリと口にする。
「ま、ま、かたいこと言わず、何飲む? 勝っちゃん」
どうやら数合わせに連れてこられたようだ。検見崎にまんまとしてやられたと思いつつも、憎めない笑顔にごまかされてしまう。
「えっとー、光榮社の『the あにまる』編集部でバイトしてる岩崎真理です。マリーって呼んでくださいねー」
編集部でいつも顔を合わせている真理も、今日は化粧に気合が入っている。
短大を卒業してから編集部では主に雑用的な仕事をしているが、父親がそこそこ有名な作家で担当編集者の口利きで入ったらしい。
勝浩にしても検見崎の紹介だから何を言うべくもないのだが、やはり強力なコネクションがあれば就活も有利に動けるのはあたりまえというところだろうか。
隣の検見崎など、光榮社の親会社である新洋社社長の息子なわけで、次男だとはいえ何の苦労もない人生を謳歌しているとしか見えない。
早速、得意のおしゃべりで女の子たちを笑わせている検見崎にちょっと目をやると、勝浩は苦笑する。
ところは新宿の洋風居酒屋、大テーブルに五、六人ずつの男女が入り混じって座っている。生ビールを手に、自己紹介が始まった。
「ちょ、場違いじゃないですか? 俺。Tシャツにジーパンだし」
勝浩が検見崎にこそっと呟く。
「勝浩はそのままでいいの。可愛いから、あっちのオヤジどもに全然負けてない」
「いや、そうゆーことでは……」
この暑いのにびしっとスーツで決めたサラリーマンたちも何やら気合が入っているようだ。
顔ぶれも女の子たちが騒ぎそうなイケメンが並んでいる。
あと何人か来るらしく、席が空いていた。
「堺勝浩です。大学二年です」
自分の番になったので、それだけ言って勝浩はペコリと頭を下げる。
途端、かーわいい、という声が女の子たちからあがる。
この、可愛い、が勝浩がこういう場所が嫌いな大きな理由だ。
「大学、どこ?」
「慶洋大理学部です」
「もういいでしょ、ボクの可愛い後輩をいじめないでね。次、俺、検見崎武人、慶洋大、えーわけあってもう一度二年生でーす。タケちゃん、って呼んでねっ」
仏頂面で答える勝浩の横から、検見崎が声を大にして主張すると、場がどっと沸く。
勝浩はやれやれと、手持ち無沙汰にビールを口にした。
「おう、やっときやがった。幸也、こっちこっち!」
そう言って検見崎が手を上げた瞬間、勝浩はビールを噴出しそうになった。
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