「ふーん、子どもじゃないってことは、もう、あーんなことも、こーんなことも済ませちゃったってこと?」
幸也に顔を覗き込まれて、勝浩は耳まで真っ赤になる。
「いやーん、素直な反応。そっか、俺のいない間に、勝浩ってばいろいろ経験しちゃったんだ」
幸也はにやにやとグラスを口に運ぶ。
「ば、バカなことばっかいって、わざわざ俺をからかいに帰ってきたんですか、アメリカから」
「ビンゴ!」
笑いながら幸也はタバコに火をつける。
まったくいい加減なことばかり言って、と勝浩は苦笑する。
だいたい、俺のいない間にってなんだよ。
それこそ俺に何の断りもなく、勝手に留学したくせに。
まあ、俺に断りなんかするわけないか。
昔から、そして今こうして再会してもやはり、幸也にとって自分は、そんな風にからかいの対象にしかならないのだ。
勝浩は、こんな男を心の奥底で未だに思っている自分が滑稽に思えてくる。
といって、心のゆくえばかりは自分でもままならないものなのだ。
「で、お前の彼女ってどんなコ? お前のことだから、一人だけに貞操守ってるんだろ?」
何がいやって、幸也のこういうところだ。
からかってるだけじゃなくて、勝浩の性格もちゃっかりわかっていたりする。
「そんなの俺の勝手でしょ。長谷川さんこそ、向こうでもどうせ、女の子たくさん泣かしてたんじゃないですか」
「人聞きの悪い。どんな女の子にも優しくってのが俺のポリシーなんだ」
「ポリシーなんて、よく言いますよね」
勝浩はびしっと言い放つ。
「それより、遊びといったらディズニーランドしか知らなかった勝浩だからな。女の子に襲われて、あーれーとか言ってるうちにやられちゃったりして」
「何で俺が襲われるんです? 時代劇の町娘ですか、俺は」
「おう、初いやつじゃ、くるしゅうないぞ!」
ゲラゲラ笑いながら、幸也はガシッと勝浩の首に腕を回す。
「幸也ってば、可愛い子餌付けして、くどいてるしぃ」
ドキッとする科白に、勝浩が顔を上げると、向かいからきれいな笑顔が見つめていた。
幸也と一緒に現れたモデルだという美女だ。
ひかりと言ったか。
お陰でみんなの視線が一斉に二人に集中する。
「ねえ、ねえ、君、幸也の高校の後輩なんだって?」
ひかりはわざわざ席を立って、二人の後ろまでやってくる。
「勝浩っていうの? 可愛い~い」
勝浩は幸也の彼女かもしれないひかりにそんなことを言われ、思わず目の前にあったグラスをゴクゴクと飲み干した。
「おいこら、大丈夫か、勝浩」
気づいた幸也が心配そうに勝浩の顔を覗き込む。
「うん…………」
ちょっと、かなり酔っ払ったみたいだ。
しっかりしなくちゃ、と思うのとは裏腹に、朦朧としてきた頭がぐるぐる回っている。
「眠…い…………」
そう呟いた直後にはもう、勝浩はテーブルに突っ伏して眠ってしまった。
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