月で逢おうよ16

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 二十歳になってから、クラスの友人に誘われたり、研究会のみんなと飲む機会は何度もあって、勝浩も少しはたしなむようになっていたものの、酒が入ると眠くなってしまうようで、部屋で高校からの友人である七海と飲んだりした時は気がつくと朝だったことがあった。
「あぶないなぁ、外ではあんまり飲まない方がいいぞ」
 ユウを散歩に連れて行ってくれた七海が戻ってきて、目を覚ました勝浩にコーヒーを出しながらそう言った。
「あぶないって、別に女の子じゃあるまいし」
「いんや、勝浩なんか、女にお持ち帰りってケースも考えられるしな」
「何だよ、それ!」
 その時はむかついたが、飲み会の帰り、駅を三つも電車を乗り過ごしたこともあり、外で酒を飲むときは気をつけるようにしていたのだ。
 だがしかし、突然現れた幸也に思った以上に精神的にパニクっていたらしい。
 検見崎に担がれて店を出た時、勝浩は全く意識がなかった。
「どんだけ飲ませたんだよ、俺の大事な勝っちゃんに」
 タクシーの中で検見崎は、勝浩を間に挟んで、幸也に突っかかる。
「何が俺の大事な勝っちゃんだ。いつの間にか俺の酒、飲んじまってたんだよ、間違えて」
 幸也は心外だと言わんばかりに言い返す。
「ちゃー、まったく、こいつ引っ張り出すのに苦労したんだぞ」
「るせーな、何でお前ついてくるんだよ、タケ。こいつは俺が送るって言っただろ」
「場所も知らないくせに」
「とっとと教えればいいだろうが。大体他のメンバー放り出してきていいのかよ」
「ぬかせ、お前こそ、ひかりたち放ってきて、いいのかよ。タクシー代はお前が払えよ」
「面白そうとかって、勝手にきたんだよ、あいつらは」
 二人が押し問答をしているうちに、タクシーは目白台に着いた。
「へえ、ここに住んでいるのか。なかなかいいじゃん、庭も広くて」
 勝浩を肩に担いだ幸也が言った。
「ばーか、こりゃ、大家の家。勝っちゃんの部屋はそっちの離れ」
 検見崎は勝浩のポケットを探って、鍵を取り出してドアを開ける。
 途端、待ちかねたようにユウが駆け寄ってきた。
「おう、お前が噂のユウか」
 名前を呼ばれて、くーん、とユウは幸也を見上げる。
 八畳ほどのワンルームにブルーのカーペットが敷かれ、ベッドに書棚、机、箪笥などが整然と並んでいる。脇には小さなキッチン、バストイレのドアがある。
「なんか、勝浩らしい、部屋だなー」
 幸也はこざっぱりと片付いた部屋を見回して、感慨深げに言った。
「感心してんなよ。早くベッド連れてけ」
 検見崎はリードをユウの首輪に引っ掛ける。
「よしよし、ご主人様はあの体たらくだから、俺が連れてってやるからな」
 ドアの前でふと立ち止まると、検見崎は幸也を振り返った。
「お前さ、勝っちゃんにどんな悪さしたわけ? 俺に車を渡すほど何年も気にかけるような」
「……お前に語るほどのことじゃねーよ」
 幸也は言葉に詰まる。
「ひょとして、勝っちゃんの女、取ったとか?」
「バーカ、してねーよ。ただ、まあ俺、多分、嫌われてっからな」
 幸也はにやりと笑う。

 


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