忘れもしない、小学生の時、城島志央と一緒に勝浩に散々悪ふざけをした上級生。
子供のくせにやけに大人びて見えた。
「近頃の先生は何を教えてる、だって、笑わせるよ。いじめっ子はお前じゃないか!」
だが、その日のことが、何故か心に残った。
それから時折、塾への道すがら、その公園を通るたびに、子供たちと遊ぶ幸也を見ることがあった。
あとになってわかったのだが、志央がお習字にいっている間、幸也はそこで時間をつぶしていたらしい。
子供たちと一緒に無心に遊ぶ幸也が何だか清々しく、子供たちは彼に懐いて、彼の教えることに素直に頷いていた。
とてもいい人だと思っていたのに、その人の嫌なところを見つけるとがっかりすることがあるが、何てひどい人だ、と思っていた相手のいいところを偶然見つけたりすると、それがひどくすばらしいことのように思えてしまう。
勝浩があれほど嫌っていた陵雲学園高校を受験したのは、その公園で幸也を見た、それだけが理由だった。
品行方正、成績優秀な勝浩を周りが推したのをきっかけに勝浩が生徒会に入ったのも、幸也がいたからだ。
再び会ってみると、幸也とジャイアン志央との悪ガキコンビはエスカレートしていて、生徒会長と副会長という名前の裏でやりたい放題。
それでも成績は常にトップクラス、しかも生徒会の仕事はきちんとこなし、全校生徒の信頼も厚い。
加えて見てくれは申し分ない、とくれば、少ない女子生徒の殆どを味方につけたようなものだ。
悪ふざけが好きな幸也と志央のコンビは、案の定まじめな勝浩を面白がってからかい、勝浩はムキになって二人に意見する。
だが、いじめられるばかりだった子供の頃とは違い、勝浩は正しいと思ったら教師にですら遠慮なくずけずけものを言う、ある意味外見を裏切るキャラクターになっていた。
いつか二人の尻尾を掴んでギャフンといわせてやろうと思っていた勝浩に、思ってもいないチャンスが訪れたのは一年の冬休みのことだ。
一家でディズニーランドに出かけた勝浩は、パレードを見てからチェックインしたホテルのラウンジで、それぞれ女連れの幸也と志央に出くわしたのだ。
「やだぁ、すんごい飛ばすんだもん、幸也ったら。車、浮いてたわよぉ」
可愛い美女がしなだれかかっている幸也は私服というだけで高校生には見えない。
「ドイツ車は頑丈だから平気平気」
車のキーらしきものをちゃらちゃら手でもてあそんでいる幸也の後ろには、志央が大人の美女といちゃらいちゃらくっついたまま歩いている。
「負けちゃったじゃない、志央」
「俺は安全運転だからね、君に怪我させたくないしさ」
ドイツ車? 安全運転?
いくら誕生日早くても、二年の冬に十八歳になるわけないじゃん、普通。
ギロッと睨みつける勝浩に、ようやく幸也が気づき、さすがにちょっと驚いたようだ。
勝浩はその場で何か言うでもなく、踵を返すと、家族に合流した。
三学期の生徒会は静かだった。
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