勝浩が、いつ、何を言うか、幸也も志央も戦々恐々として、ようすを伺っていたに違いない。
思えば、その頃からこの二人は何人女を落とすか、なんてことを競争して、しかも賭けなんかをしていたのだろう。
人の心をもてあそぶなんて、ほんとに許せないやつらだ!
そう思う傍から、勝浩の目は幸也を追っていた。
だから、幸也が誰を追っていたか、はたでみていれば一目瞭然だったのだ。
そして度を越した遊びの賭けの代償は、幸也と志央の間にあった危うい絆の亀裂。
どちらが先に落とすか、性懲りもない、志央のターゲットは春にやってきたでかい転入生、そして幸也はこともあろうに勝浩をターゲットにしたのだ。
女子生徒が少なかったからか、きれいな志央に夢中になるのは女子ばかりではなかった。
だが、まさか志央がそのターゲットに本気の恋をするなんて、幸也としても思ってもみなかったのだろう。
「女やガキ相手なら、俺も許してたさ」
幸也が志央にキスしているところを勝浩は垣間見てしまった。
「ヤローになんかお前が本気になるなんて思ってなかった」
急に自分に優しくなった幸也のことを、勝浩も変だとは思っていた。
「志央と俺がよくやる遊びだ。どっちが早く落とすかってな」
「ほんと、サイッテーだよ、あんたたちって」
露悪的な台詞を吐く幸也に、勝浩は辛辣な台詞を投げつけた。
結局、ジャイアン志央は本気の恋を成就させ、学園の大学に進学し、幸也は志央とでかい転入生をからかうことで、一見してさほど変わらない風を装いながら、学園を卒業していった。
幸也の、志央への想いがどれほど深いものか、ずっと幸也を見てきた勝浩だからこそわかる。
志央を見つめる眼差しがどれほど優しかったか、それを気づかないなんて、志央はバカなやつだ。
でも、あなたがちょっとからかったつもりの俺が、実は随分傷ついていたなんて、それこそ思ってもみなかったんだろうな。
ずっと好きだった。
嘘の優しさでさえ、つい嬉しくなってしまうくらいに―――――――。
あれは一体なんだったんだ?
合コンだか何だかの翌朝、勝浩は自分のベッドで目が覚めた。
がばとからだを起こした途端、ユウと目が合った。
リードが置いてある場所がいつもと違う。ユウは散歩をしたらしい形跡がある。
「俺、散歩行ったっけ? ユウ」
小首を傾げるユウが、答えるはずもない。
とにかく記憶が途切れるまで酒を飲んだことなど初めてだ。
おまけにまたあの頃の夢をみていた。
幸也との再会すら夢のように思えてしまう。
胸の痛みだけは未だにあるのに。
あれが現実だったら、幸也はもう過去の恋なんかとっくに清算して、新しい恋人とよろしくやっているのだ。
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