ACT 3
さすがに空気が違っていた。
山々の連なりにさえ、手が届きそうだ。
「ひゃっほうっ!!」
「ぜっけーだー!!」
九月も終わりのよく晴れた日の早朝、『動物愛護研究会』の一行を乗せた数台の車は、八ヶ岳の麓にある検見崎の山荘に向かって、ひた走っているところだ。
窓から顔や手を出して、ぎゃあぎゃあ喚く男どもと、携帯であちこち撮りまくっている女の子たち。
犬たちも少しだけ開いた窓から、鼻をつきだしてクンクンとうまい空気の匂いをかいでいるようだ。
「ようこそ、『動物愛護研究会』ご一行さま!」
山小屋に着くと、先回りして準備を整えていた検見崎がラブやロクと一緒にみんなを出迎えた。
「それでは、『強化合宿』会場へと皆様をご案内しま~す!」
垪和のマーチには美利と猫二匹。大杉がワゴン車で男四人と犬三匹、春山が女の子二人と男二人を乗せ、幸也は勝浩やユウ、ビッグと一緒に、酒や食料を大量に乗せてやってきた。
総勢、十五人と九匹。
みんな大騒ぎでそれぞれ割りあてられた部屋へ、トランクから出した荷物を運ぶ。
もちろん犬や猫たちも忘れてはいない。
山荘といっても、元はペンションだったものを検見崎の母親が買いとったのだという。
和、洋合わせて八部屋あって、うち半分はバストイレ付という豪華なしろものだ。
女の子たちは大きな家族風呂を楽しみにしていて、部屋割りする時に一番眺望のいい広い和室をさっさと確保している。
男たちの部屋は、検見崎によって勝手に割り振られた。
だが、「俺、勝浩とか?」という幸也の発言が、部屋に荷物を運ぶときも、勝浩の中でずっと引っかかっていた。
幸也が合宿に参加すると聞いた時は、「また会いたいと思ってたのよ!」と喜んでいた垪和よりもずっと勝浩は心がドギマギして嬉しかったのだ。
施設を訪れた際にちょっとしたことで逃げ出したユウを探すのを幸也に手伝ってもらって以来、久しぶりに顔を合わせた幸也は相変わらずだった。
道中、幸也はまた散々勝浩をからかうし、アメリカでのおかしな話ばかりを聞かせるので、こんなに笑ったことはない、というほど楽しかった。
「アニマル・セラピーって知ってますか?」
だから、ついうきうきと、この先自分が何をやりたいか、なんてことまで、勝浩は幸也に語ったりした。
「聞いたことはあるな」
「人と動物とがふれあうことで互いに生まれる心身への働きを考えるっていう科学があるんです。そういう研究をしている教授がいて、そのゼミをとるつもりなんです。あと、やっぱ保護活動」
「へえ、いいじゃねーの? 俺もな、あれだ、ニュースで動物虐待とかって聞くだろ? 見つけたらぶっ殺したろかってくらい、腹立つんだよ、そういうの。人間の都合で飼えなくなったら処分とかってふざけるなって」
憤る幸也には、勝浩にも納得するところがあった。
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