月で逢おうよ7

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「さっき編集部の人たちと話してたやつでしょ? お断りします」
 そう言い合っている間に、車は勝浩が借りている部屋の前に停まった。
「たまには、融通を利かせようよ」
「ユウの散歩があるから、ダメ。じゃあ、どうもありがとうございました」
 にこやかに車から降りる勝浩を見送って、検見崎は大きくため息をつく。
「こりゃほんと、一筋縄じゃ、いかねーわ。可愛い顔してるくせに」
 煙草を灰皿に押しつぶすと、ハンドルをきって、検見崎は大通りへと車を走らせた。
 
  

 
 キャンパスを囲む常緑樹がうっそうと連なるその傍らを通り抜け、勝浩は足早に図書館裏へと向かっていた。
 目指す先には古びたクラブハウスがぽつねんと建っている。
 『動物愛護研究会』と殴り書きされたプレートがかかるドアの前には、毛並みのよさそうなゴールデンレトリバーと後ろの方にはハスキーが一匹気だるげに寝そべっていた。
「勝浩くん、今日の当番、一人だっけ? ロクたちの散歩、大変じゃない?」
 振り返ると美利が足早に近づいてくる。
「うん、昨日よりは涼しいから、よかったよ。美利ちゃん、図書館とか? レポート?」
「うん、まあ」
 オレンジのキャミソールにジーンズの美利はカラーリングした髪を複雑に編みこんでいる。
 可愛くてキュートな、勝浩より一年下の文学部一年生だ。
 入った当初は猫が苦手そうだったが、今では猫といえば美利にお呼びがかかる。
「あれ、鍵、開いてる。誰かいるのかな?」
 窓は網戸になっているが、灯りはついていない。
「鍵閉めるの、忘れて帰っちゃったんじゃない?」
 鍵は代表の垪和が一本持ち、当番用にはドア横の柱に引っ掛けてある。
 外にいるゴールデンのロクやハスキーのビッグは、この柱と大きな銀杏の木とに張られたロープにリードでつながれ、ある程度自由に動くことができるようになっているが、暑い時は木陰から動こうともしない。
「盗られるようなものはないからいいけど」
「だって、外にはロクがいるし、中にはビッグがいるもんね」
 ゴールデンとハスキー、二匹の大型犬の他に、中にはヨークシャーのヨーク、柴系の雑種のポチ、それにシェトランドのチェリーと、犬の檻のような部屋にわざわざ忍び込もうなどという変わり者は確かにいないだろう。
 勝浩が電気のスイッチを入れて中に入ると、美利も続いて入ってきて、大きめのトートバッグを肩から降ろしてソファに置いた。
「あたしも手伝う」
 美利は部屋の真ん中にどんと大きく陣取るテーブルの上で猫たちの食事を用意を始めた勝浩の横にきて、キャットフードの袋を取った。
「ありがとう」


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