「お前、ああゆうの、タイプなんだ? 打ち上げとかお近づきになるチャンスあるじゃん」
小笠原はまた暢気そうに話す。
「打ち上げって、お前、撮影もまだ始まってもいないんだぞ。それに、打ち上げもお前の仕事しだいだ。青山プロダクションの社運がかかってるんだからな、しっかりやれよ」
「ちぇ、プレッシャーかけるし、良太ちゃんってば」
誰かに言われたようなことを良太も小笠原に言ってやる。
事実、工藤がこのドラマにかなり力を入れていることは、脚本家に友永美津子を持ってきたことでも窺える。
友永とは何度か仕事をしている仲らしいが、最近売れっ子で次々ヒットを飛ばしている友永に、仕事を受けてもらうだけでもなかなか至難の業なのだ。
さらに、春の二時間ドラマで、前回とは違う局で、また小林千雪原作のシリーズものをやることになっている。
志村が呼ばれたのはその打ち合わせだ。
というわけで、ほんとに、『忙しい人』なので、工藤とは会社がもし一緒で、しかも言葉を交わす仕事でなければ、全く会えないに等しい状態が内緒の夏休み以来続いているのだ。
たまには、飲みくらいいきたいよな。
なんて思う良太だった。
わーっという歓声がテレビから聞こえ、良太は画面に目を向けた。
オフィスに置いてあるテレビをつけながら、仕事をしていたのだが、また関西タイガースが負けたらしいと、良太はがっくりとため息をつく。
「これで、また優勝がいつになるか、わからなくなっちゃったじゃないか。何やってんだよ、沢村」
沢村も四打数ノーヒットと、覇気がない。
まだ、出演依頼に返答をもらっていない良太としては、沢村が打って、お立ち台にでも上がった、機嫌のいい時にでも連絡を入れてみようと思っていた。
一進一退を続けるタイガースに、各局のスポーツ番組も、また、優勝にあやかってセールを打ちたてようとしているデパートなども、神経をすり減らしている。
「良太、ニューヨークと連絡とって詳細詰めておいてくれ。来週のアポもな」
ドアを開けるなり良太にそう言いながら、工藤がたったかとオフィスに入ってきた。
「あ、お帰りなさい。大阪はどうでした?」
「まあまあってとこだ。煩い古だぬきがいるからな、そいつを動かすのにこっちも一苦労だ。あのクソオヤジ、主演女優を食わせろまでいいやがって」
「いくらなんでも冗談でしょ」
良太は驚いて工藤を見る。
「俺もそういってやった。へらへら足元見やがって」
これまでにも大淀電工はたまに契約をかわしていたが、広報部長が気に入らない工藤は本当のところ切りたい相手だった。
実は良太には言っていないのだが、向こうから言ってこない限り、工藤は最近鴻池産業にはこちらから頭を下げてスポンサー契約を取ることをしていない。
鴻池産業と契約ができれば、古だぬきなどこっちからお断りなんだが。
鴻池は良太のことがあるし、古だぬきと鴻池、できれば工藤としてはどちらもさけて通りたい相手なのだ。
「そういえば、『パワスポ』、沢村の出演交渉、大丈夫なのか? 殿村に聞いたが、お前、沢村と親しいのか? 先だっての密着取材も、お前のお陰でとか、言ってたが」
唐突に問いただされ、良太は、はあ、と曖昧に返事をする。
「いや、親しいってわけじゃ……ただ、ガキの頃から、沢村のチームと対戦することが多くて。大学まではその、試合でたまに顔あわせてたから。もっとも、俺が三振とったの、ほんの三回くらい、でしたけどね、へへ…」
「ほう?」
そっけない返事をして、工藤はそそくさとまたどこかに電話をしている。
良太は、心の中でちぇ、と思う。
もっと、なんか、こう、別のリアクション、ないのかよ!
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