どうせ、俺が打たれてばっかだったんだろう、でも、よく三振なんかとれたな、でも、さー、ひとことくらいあってもいいよなー
忙しいのはわかってるのだ。
やはり友達と話すようにはいかない相手だということも。
まさしく最近では、良太をからかう時間もないらしい。
工藤の電話が終わると、良太はニューヨークとのやり取りの詳細を報告した。
「ニューヨーク時間で月曜日に先方とランチミーティングということになりました。そのあと、実際に店舗に案内してもらい、条件や留意点についてチェックすることになっています」
「わかった」
工藤はスケジュール帳にざっと書き入れる。
「『NDI』の中山さんに今日会ったんだが、お前がよくやっている、と言ってた。ついでに、沢村が出てくれるらしいから、とえらく喜んでいたぞ」
不意に工藤が言った。
「え、待ってください、まだ沢村とは交渉中で、出てくれるとはっきり決まったわけじゃ……」
良太は慌てた。
どうしてそんなことになっているのだろう。
出てもらいますなんて言って、出なかったじゃ、最初から出ないよりまずいかもしれない。
「まあいい。もし出なければ、俺が謝っとく」
「え、いえ、そんな……」
困惑している良太の携帯がポケットで鳴った。
一体こんな時間に誰だろう、と思いつつ、「ちょっと、すみません」と工藤に断り、携帯を見る。
「あ、沢村?!」
今しがた話題にしていた本人からの電話だ。
「いや、今日は惜しかったな……」
昔なら、いや、内心では何でとっとと打たないんだ、と思っている良太なのだが、仕事が絡んでいる今、つい言葉も委縮する。
何しろ、良太のひとことで沢村の機嫌を損ねたら、工藤にもしわ寄せがくるのだ。
「何、心にもないこと言ってるんだよ、何で、打たないんだ、ってなこと思ってるくせに」
「え……あ、まあ、その、早く優勝が決まればいいな…とは……」
「心配すんなって。お前の番組、ちゃんと出るからさ」
「え、ほんとに? 出てくれるのか?」
「ああ、広報から明日ちゃんと連絡いれてもらうから。それよかもう、ダッセーよ、俺。あんなへなちょこピッチャー打てねーなんてよ、お前の球三振した時よか、うぜーよ、俺」
「何だと? それ、どういうことだよ! 俺だって今も続けていれば、お前なんかビシバシ三振とってら!」
途端、電話の向こうで思い切り笑う声が聞こえた。
「くっそー! 失礼なやつ!」
良太は携帯に向って喚く。
「おい、良太、良太」
「何だよ?」
「条件、ありだ」
「条件だあ?!」
途端、良太は眉を顰める。
「優勝したら、祝杯、つきあえ」
構えた良太に沢村は軽く言った。
「祝杯? そりゃいいけど、お前いろいろと忙しいだろ?」
そんなことかと、少しほっとしながら良太は聞き返した。
「俺は、義理は最低限ってことにしてる。お前と飲んだ方が面白い」
「相変わらず、我侭なやっちゃな。ガキん時から成長してねーじゃん」
「じゃな、約束だぞ」
言いたいことだけ言って、切れた。
「えらく、親しそうじゃないか」
後ろから言われて、良太ははたと工藤の前だったことに気づく。
「はあ、まあ親しいっていうか、この間、久しぶりに会ってちょっと飲んだりしたから。とにかく、昔はライバルだったんで…」
「出演交渉はうまく行ったのか?」
「え、はい! 明日広報からきちんと知らせるって」
「そうか」
やはりそっけない工藤の返事に、良太は何だか面白くない。
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