「やめてよ、何でそんなフリする必要があるのよ、今さら」
「いろいろあんだよっ! チンプンカンプンなとこ、教えてもらったりとかよ。それが…」
甲本は一旦言葉を切り、はあっとまたらしくもないため息をつく。
「ぼっちゃんらはまだしも、じょーちゃんとか、俺が近づくと、後退りすんだぜ? 何も言ってねーのによ?」
今度はみんながどっと笑う。
「そらお前、いっくらおぼっちゃまぽくしよーが、こわーいオーラがダダ漏れ、出まくりだからに決まってっだろ! 泣く子も黙る一中の表の甲本っていやあ」
坂本が一番笑い飛ばした。
「てめぇに言われたかねぇ! 影鬼面の坂本のくせに!」
「うっせー、んなジュラ紀に流行ったような死語を使うな、死語を!」
「カゲキメンって何?」
白石が小首を傾げる。
「あ、過激なメンズ?」
「あっそうそう!」
適当な言葉を口にする白石に、坂本は思い切り頷いてみせる。
「ごまかそーたって、そうはいくか!」
尚も甲本は坂本に突っかかる。
「いいか、俺は今じゃ、陰どころか、バーンとファッション誌を飾る………」
「あっ、そうだ、坂本くん、『ゾンネ』の先月号に載ってた!」
坂本と甲本を中心にわいのわいのと盛り上がっているのを横目に、「お前、やっぱあんま食ってねえし」と力が佑人の皿を見て言うと、ちょうど横を通り掛かったスタッフを呼び止めた。
「マルゲリータ、エビのチリマヨ、串焼き盛り合わせ、照り焼きチキン、シーザーサラダ、あと、ハイボール二つ」
メニューをざっと見した力は端的に注文すると、空になった自分のグラスと佑人のグラスをスタッフに渡す。
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