そばにいたい22

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 最近になって時々家を空けるようになった佑人に、どこにいるかさえ伝えていれば家のみんなは何も言わずに佑人に任せているし、大抵いつもの仲間と一緒だと思っているようだ。
 むしろ、引きこもりがちだった佑人を外に引っ張り出してくれた仲間たちを歓迎してくれている。
 要領のいい坂本は美月や郁磨とはすっかり打ち解けて成瀬家に出入りするようになったし、東山は佑人と一緒に郁磨にテニスクラブに連れて行ってもらったり、啓太はデザイン学校で知り合った友達と一緒に遊びに来たりしている。
 郁磨や近ごろ美月もたまに『ワンちゃんネコちゃんとご一緒に カフェリリィ』に顔を出して、練とも馴染みとなっている。
 佑人にとってはラッキーの散歩が問題だが、今夜飲み会だと言ったら、郁磨が早めに帰ってくるので任せろと言ってくれたし、力のマンションからなら佑人の家まで歩いても十五分ほどだから、十分帰ってこれる。
 坂本と一緒にタローを伴って成瀬家を訪れたことはあるものの、他のみんながそれぞれに打ち解けているにもかかわらず何となく未だにぎこちないのが力だった。
 今更、坂本の名前を騙ったことを引き摺っているとは思えないのだが、やはり佑人とつき合うようになったことで、佑人の家に行きづらいのかと、佑人は思う。
 それはどういう感情なのだろうと、考えてしまう。
 佑人にしても、つき合っていることを百合江に話したと力から聞いた時は、百合江と相対した時にぎくしゃくしそうな気がしたのだが、百合江は以前と変わりなく、ハートマーク付きの女子高生そのままに佑人を可愛がっている。
 時々、練の前などでは、「佑人ちゃん、やっぱり力なんかにもったいない!」などと本気モードでハグしたりする。
 変化と言えば、成瀬くんが佑人ちゃんになったくらいだ。
 ただ、何か引っかかりがあるとすれば佑人の心の中だろう。
 家族に力とつき合っているとはまだ言えないでいる。
 男だから後ろめたいとか反対されたらどうしようとか、そういうことではないのだ。


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