そばにいたい4

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 それにしてもここのところ、いつも以上に坂本が何だかだと佑人をかまうのは、おそらく最近世間を騒がせている例の件のことがあるからだろう。
 もう、自分では克服したつもりだが、家族も態度から佑人を気にかけていることがすぐわかる。
 佑人の母、渡辺美月がもう大御所とさえいわれる人気女優であるがゆえに、ことあるごとにマスコミは昔のことまで引っ張り出してくれる。
 こうもいろんな媒体で情報が溢れかえっている昨今では、いくら佑人が耳を閉ざし目を背けていても、思いもかけないところから勝手に佑人を引き摺り込もうとするのだ。
「あれ、ひょっとして、渡辺? 渡辺佑人だろ?」
 こんな風に。
「やっぱりな、さすが渡辺、T大生か。あれ、覚えてない? 俺、中学の時同じクラスだった川上」
 どこにでもいそうなお坊ちゃん風の学生で、川上という名前には記憶があったが、佑人はその顔を覚えていない。
 だがどうやら佑人が克服したはずの古い時間からやってきたその学生は、佑人のことをしっかり覚えているようだ。
「あ、俺は聖城大だけどね。サークルでさ、ここの」
 克服したつもりだったが、聖城という言葉に佑人は反応していた。
 当時通っていた中学は聖城学園大の付属校だった。
「ちょっとぉ、川上くん、何やってるの?」
「こっちじゃないよ」
 そこへ現れたのはお嬢様風女子大生二人。
「お前ら、誰だと思う?」
 川上は女子大生たちに佑人を目で指し示した。
「え、まさか、渡辺くん?! びっくり! あたし、島崎明奈よ!」
「すんごくカッコよくなったってより、超、超美形! 佐藤なつみ、あたしのこと忘れちゃった?」
「もしかして、モデルとか俳優とかやってるの?」
「そうだよね、お母さん、大女優だもん!」


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