「完全に五時過ぎるよな、力の怒りの形相が目に見えるようだぜ」
足早にキャンパスを後にすると、坂本が笑った。
「面白がってるな」
「そりゃなぁ、ははっ!」
「でも坂本、雑誌にも出てるのか?」
「ああ、アパレルの社長つながりで、女の子雑誌にちょっとね」
「女の子に益々騒がれるわけだな」
佑人はそう口にしてから、思考は別のところに飛んだ。
坂本も女の子に人気はあったけど……
高校時代、教師の間では問題視されていたが、力は圧倒的な存在感で生徒の間では一目置かれ、自分に自信のありそうな女子が常に力に近づいていた。
それってきっと今も、だよな……
同じ空間にいたから、いつもそれを目の当たりにしていた佑人だが、佑人の知らないところで、佑人の知らない女の子がおそらく力に近づいているに違いない。
目の前でそういうシーンを展開されるよりはいいかもなどと思ってはみたものの、今度は勝手に想像して気になってしまう。
「やつら、結構無神経な連中だな」
電車に乗ってからも、力の周りには今どんな女の子がいるんだろうとか考えていた佑人は、坂本の言葉に、えっと見上げた。
「中学の同級生、あんまし会いたくないやつらだったんだろ?」
だから佑人を気遣って、さっきは女の子たちにあんな言い方をしたのか、と佑人は理解した。
「あ、ああ、そう。でも大丈夫だ、もう。何か、こっちが気にするほど向こうは覚えてもいないみたいだし」
彼らとはまたあえて関わることはないだろうと佑人は思ったのだが、見上げた坂本の後ろに下がっている雑誌の中づり広告に書かれたキャッチコピーが目に入って、佑人は少し眉を顰めた。
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