煙が目にしみる22

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 ライブ以外でも、行く先々で、初めて見る風景や人々に、豪は夢中でシャッターを押した。
「おお、カッコいい! この元気のショット!」
 大学のカフェテリアで、豪ができ上がった写真を並べているのを見つけて、マサが手に取って声を上げた。
「こら、返せよ、今までで一番の傑作なんだから」
 ギターを目の前に掲げ、陶酔しているかのように目を閉じ、少し開いた唇、長い髪がTシャツから覗く白い胸に垂れ、何か妖艶な雰囲気さえ漂わせている。
「元気って、時々、妙に色っぺーよなー。ちょっとドキとかしねー? お前最近やたら、元気と仲いいけど」
「う……だなー、ライブの時なんか、悩殺的ってくらい」
「一平がよろめくのも無理ねーよなー」
 ポツリと言ったマサの一言に、豪はすかさず反応する。
「え…なんだよ、それ?」
「そっかまだ知らねーのな、豪。実はさ……」
「おい、マサ、ノートコピーするんじゃねーのかぁ?」
 何か言いかけたマサを友達が呼んだ。
「いっけね、コピーしねーと、もうテスト全滅なんだ。じゃ、ライブで」
 走り去るマサに目をやりながら、豪は釈然としない顔でちょっと首を傾げるが、写真をいくつか選んで丁重にファイルにしまうと、あとの写真をまとめて無造作にバッグに突っ込んだ。
 二月に入ってからというもの東京は強烈な寒気団にすっぽり覆われ、雪は降らないものの恐ろしく冷え込んで、昼になっても気温は上がらなかった。
「ぎぇ、なんだこのブタ猫!」
「可愛いだろー、この辺りのボス猫らしくてさ。でかい顔が憎めないんだなー」
 大学から自転車で通える距離にある元気の部屋へ上がりこんだ豪は、炬燵に足を突っ込んでニマニマと自分の撮った写真を広げて眺めていた。
 そんなようすを見て、それこそ憎めない大柄な子供のように無邪気なやつだと、元気はつられて笑う。
「何だよ、犬やら猫やらばっかじゃん」
「だってさー、こいつら、穢れてないってーか、食ってても寝てても、何しててもいとおしーって感じになるじゃん。あ、これ、これ、こいつが傑作!」
 オヤジの髪の薄い頭を、カラスがつついているその瞬間をとらえたものだった。


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