夏を抱きしめて15

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 車なら駅から五分とかからないところにあるマンションの五階に、勇気一家は住んでいた。
 三LDKのリビングの一角に観葉植物をパーテーションにしてコンピューター機器がゆったりと並び、勇気のオフィスになっている。
「今度はお部屋もあるから、ゆっくりなさってね」
 案内してくれた部屋は六畳ほどで客間になっているようだ。
 以前の家は2LDKで、一度元気が泊った時は居間のソファだった。
 二人の小さなギャングどもの襲来に眠るどころの騒ぎではなかった。
 それを思い出すと、今の状況にちょっとほっとして、明日の披露宴に来ていく服をハンガーにかける。
 その時元気のジーンズのポケットで携帯が鳴った。
 はっとして、元気は慌てて携帯を取り出したが、表示されているのは江川という文字。
『今、東京?』
「おう、昼に着いた」
 ちょっとガッカリしている自分に苦笑しながら、元気は答える。
『俺んとこ、くればよかったのに』
「兄貴んちにいるんだ」
『あ、そか。そだ、二次会、お前も来るよな? もうメンバーに入ってるから』
「え、おい」
『わり、これから会議なんだ、じゃ』
「ちょ……」
 切れてしまった携帯をしばらく見つめてから、仕方なくポケットにしまう。

 


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