夏を抱きしめて28

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「知らぬは当人ばかりなりってな」
「何だよ、それ」
 元気は眉を顰める。
 郷里に戻った時にその世界からはきっぱり足を洗ったつもりだった。
 だから、今更GENKIのことを言われるのもあまり歓迎しない。
「お前さ、冬あたりに下北沢のライブハウスで何とかってバンドとセッションしただろ? しかもそこへ一平が現れてお前をかっさらったと」
「何で、そんなこと……」
 将清が知っているのだと元気は訝しむ。
「そん時の海賊版ライブCDが密かに流れてて、ここんとこかなり売れてる」
「ウッソだろ?」
 元気には寝耳に水の話だった。
「GENKIからすれば、お前はメンバーじゃないから阻止しようがない。一緒にやった何とかってバンドはお陰で 客の入りがいいんで、文句のいいようがない」
「お前、スポーツ誌の編集だろ? 何でそんなこと」
「でなくても自然と耳に入るよ。俺も地味な美術雑誌の編集だけど」
 江川までが話に割り込む。
「だから、みっちゃんとか、Gコーポレーション社長の浅野がその情報を懸命に抑えてるって話。お前のために」
「何で俺のためだよ?」

 


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