いつかそんな夜が明けても12

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 バスルームのドアが開く音がしたので、「食事はちゃんと取ったのか? 腹減ってない? 何か作ろうか?」と出てきた工藤に良太が声をかけるが、「いらん」というそっけない返事がかえる。
「じゃ、何か飲む? ミネラルウォーターだよな、ビールとか傷にはダメそうだし」
 冷蔵庫のドアを開けて中を物色していた良太は、「ビールでいい」と後ろからする声に振り返り、「ダメに決まってる……」から続けようとしたところを唇でふさがれた。
「…………う……ちょ………」
 息をつく合間、言葉にならない単語を並べながら、良太は工藤の腕に抱きこまれる。
 離してもらえないキスの熱さに、しばらく放っておかれた身体は良太の思惑を無視して浅ましく反応し始めている。
 そのままベッドになだれ込む。
「工藤……腕……傷が……ダメっ」
 ようやく工藤の怪我を思い出した良太は、何とか正気に戻ろうと試みるが、「暴れるなよ、傷が開く」の一言で却下された。
 女とは全く違う身体なのに、すっぽりといく分硬さのある身体が妙に抱き心地がいいのだ。
 唇の動きとか、首から胸にかけての思いがけぬ艶かしさに情をそそられることがある。
 しなやかさと生きのよさが同居して工藤を魅了する。
 ひとたび腕に引き込んでしまえば、もう歯止めが利かない。
 細い腰を引き寄せて欲望をうちつける。
 あとはひたすら悦楽をむさぼるだけだった。
 

 
 疲れきって自分まで眠り込んでしまった工藤は真夜中、目を覚ました。
 さすがにちゃんと処置をして包帯を巻いておかねばなるまいと、工藤は身を起こす。
 ――――――――――良太
 ひどく疲れさせたな。
 目を覚ます気配はない。
「――――――良太」
 工藤は心の中の呟きを唇に乗せた。
 護らねばならないのはお前だ。
 そうだ、お前を前にしたら、くだらない正義など吹っ飛ぶ。
 工藤はしばらく良太の寝顔を見つめていたが、猫たちの目がじっと自分に向けられている中、やがて静かに良太の部屋を出た。
 

 
 朝、目が覚めた良太の隣は既にも抜けの殻だった。
「ちぇ、勝手なんだからよ………」
 良太は呟く。
 そういえば包帯、自分でやったんだろうか。
 あんなことになってしまい、腕の包帯を取り替えるために工藤がきたこともどこかにうっちゃられたことが、ようやく良太は心配になる。
「なんか、ちょっと変だったな」
 何がというわけではない、しいていえば自分を見下ろしていた工藤の目の色だろうか。
 工藤らしからぬ色をたたえていた。
 そんな気がして、漠然とした不安が良太の心に残った。
 


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