広瀬良太はその青山プロダクションの社長秘書兼プロデューサーの卵として徐々にその力をつけつつある。
乃木坂にある青山プロダクションのビルの前まできた時だ、会社のエントランスの前で、良太が黒いコートを着た男と話している。
「誰だろ。お、すげー美人。え、男?」
浩輔が車の窓からじっと目を凝らす。
「おや、あれは……」
藤堂はその人物に見覚えがあった。
すすーっと二人のそばに車を停める。
「急に予定がキャンセルになったよって、時間が空いたし挨拶に寄っただけやし。出かけるとこ、すまんかったな」
「いえ、せっかく寄ってくださったのに、すみません。多分、年末には社長、戻ってくると思うんですけど」
車を降りた藤堂は、そんな話をしている二人に歩み寄った。
「ホイ、良太ちゃん、お迎えにあがったよ。と、こちらは、以前、お会いしましたよね」
「あ、それじゃあ、また。行きますか、藤堂さん」
良太はちょっと相手に頭を下げ、慌てるように藤堂を急かして、その場を去ろうとした。
「せっかくだから、彼もお誘いしようよ、良太ちゃん」
「え、いや、あの…」
「失礼、確か、小林さん、とおっしゃいましたよね? プラグインの藤堂と申します。先だってはちゃんとお話できませんでしたが、鴻池さんが、次の映画にあなたをというようなことを言ってらしたが、どこのプロダクションに所属されているんですか?」
すかさず藤堂が名刺を差し出すと、小林は成り行きで名刺を受け取ったものの、ちょっと困惑気味だ。
「藤堂さん、違いますよ、小林さんはタレントとか俳優とかじゃないし、どこのプロダクションにも所属してませんよ。それ、鴻池さんの一方的な思い込みですって」
代わりに良太が必死で言い張る。
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