空はやっぱ青い30

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「そのめんどくさいわけ、いうんが、良太ちゃんをして黒歴史と言わしめる何か?」
 佐々木が改めて尋ねた。
「うーん、確かにそれもあるとは思うんだが。あ、天野くんのことは関係ないけどね。彼、いい俳優になったし」
 藤堂は言った。
「ですねぇ。存在感半端やないし」
 うんうんと佐々木も頷く。
「ま、結局のところ、良太ちゃんのこだわりってのは、そういう面倒ごととかを度外視して、工藤さんとのことなんだと思うんだよね」
 佐々木は「工藤さん、ですか」と藤堂を見た。
「青山プロのオフィスでね、もうこれから代役オファーするとかって余裕もない土壇場で、あの仕事を良太ちゃんにって提案したんだが、これに対して工藤さんが、ド素人にできるわけないと怒鳴るし、だが河崎までが良太ちゃんで行けるかも知れないとか言い出して」
「あの河崎さんが? 滅多にないんやない? それこそ素人を使うやなんて」
「それ、切羽詰まってたのはあったと思うが、河崎が素人でも良太ちゃんで行けるって、俺も自分で言いだして正直河崎も同意するとは思わなかったさ。ところが工藤さんは断固として、こいつに商品価値があったらタレントなんかいらない、とまで言ったわけよ」
 それを聞くと佐々木は「それ、まともに言われよったら結構きついんやないです?」と眉を顰める。
「だろう? 第一、鬼の工藤にそんなこと言われた日には、まず引っ込むよな、普通の神経してたら。ところがこれが良太ちゃんの場合は」
「逆に反発した、わけですね?」
「そうそう。工藤さんに見つけられなくても俺らには見つけられるものがあるかも知れない、とかって、最後には、勝手にしろ、勝手にします……って」
 藤堂の脳裏にはあの時のシーンが蘇った。
「売り言葉に買い言葉いうやつやな。良太ちゃんらしい」
 佐々木は良太の顔を思い浮かべて苦笑する。
「けど、さっきの話やと、結果的に良太ちゃんは工藤さんの鼻をあかした、くらいやったわけやないですか。それやのに、良太ちゃん、何で黒歴史やの?」
「それなんだよ」
 藤堂が一つ息を吐く。
「鈴木さんから聞いてあとでわかったんだけどね、その頃、良太ちゃんが家族と旅行の約束があって、工藤さん、それを気にかけてたらしいんだ」
「ご家族のことを慮ってのことやったわけですか」
「いや、それだけじゃないんだけどね」
 藤堂は含みのある言い方をする。
「まあ、良太ちゃんとしては、結果よりも、何度も撮り直しになって周りの俳優陣から文句が出たりして、責任を感じちゃったんだよね」
「けど、それこそずぶの素人なわけやし、それが結果大成功やったわけで」
「何せ、直球小僧だからね、そこで二度と周りに迷惑をかけるようなことはしない、って思いこんだんじゃないかな」
「ああ、なるほど」
「まあ…」
 藤堂は言いかけて言葉を止める。
 それ以上に、工藤さんは良太ちゃんのことをタレント云々では評価しないと思いこんでるんだな。
 だから、工藤さんの気持ちを逆なでするようなことはしたくないんだろう。
 藤堂は心の中で結論付ける。

 


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