アスカと秋山が工藤から連絡を受けたのは、翌日の早朝ロケに入っていた時だった。
ロケが終わり次第オフィスに来いという。
「もう、また工藤さん横暴! 終わったらゆっくりランチできると思ったのに」
メイクを直してもらいながら、アスカが文句を言った。
「工藤さん今日は名古屋だろう、時間がないんだよ」
「わかってるわよ!」
最近は比較的ゆったり目にスケジュールを組んでいるんので、相変わらず休む間もないくらいにあちこち飛び回っている工藤に対してつべこべ言うのもどうかとは思うアスカだが、つい、口から出てしまうのはいつもの癖だ。
「でも何の話?」
「いや、詳しくは。とりあえず来るようにってことだから」
そう言いつつ、いつもは工藤はアスカのことは秋山に一任しているわけで、特別なことがない限り緊急召集などないだろう、と秋山は思う。
ロケが案外早めに昼前に終わったので、秋山が工藤に今から向かうと伝えると、昼は用意しておくという。
「え、ほんと? お腹ぺこぺこだから、早く行こ」
現金なものでお昼の話を聞いた途端、アスカは秋山を急かすように車に向かった。
「お疲れ様。お昼は特上の鰻が届きますからね。少しお待ちくださいな」
オフィスに駆け付けた二人を鈴木さんがにこにこと出迎えた。
「わあ、やった!」
機嫌よく窓際のソファに陣取ったアスカだが、「スーツって、窮屈でいや」とまた一つ愚痴をこぼす。
向いに座った秋山がアスカに顔を向けると、「言っとくけど別に太ったわけじゃないから。タイトすぎるってだけ」と、アスカは先回りして言い訳をした。
二人がオフィスに着いた時から工藤は電話中で、ぼそぼそと話し込んでいる。
「良太って、いつ帰ってくるんだっけ?」
窓からそろそろ夏の装いに代わろうとしている街路樹に目をやりながら、アスカが聞いた。
「予定通りならあと一カ月ちょいです」
「いつもならあっという間の一カ月なのに、何か長い気がする」
秋山はふっと失笑する。
アスカだけではなく自分も同じようなことを考えていたからだ。
良太ちゃんがいないオフィスは確かにつまらないな。
その時出前が届いたので、鈴木さんがお茶を入れにキッチンに立った。
「先に食べてろ」
しばし電話から離れて工藤が言った。
鈴木さんが窓際のテーブルに三人前の鰻を並べると、「鈴木さんも一緒に食べましょうよ」とアスカが声をかけた。
「何か大切なお話みたいですから」
鈴木さんはアスカにそう言って遠慮した。
「何? 大切なお話って」
アスカは秋山に聞く。
「だから私もまだ聞いてません。ま、とにかくいただきましょう」
二人が大方半分も食べた頃、ようやく電話を終わった工藤がやってきた。
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