するとジミーは、「俺もそう思うけど、結局起訴されたからな。罪状認否で、ベン、とにかく保釈されたって」と新情報を口にした。
「まあ、強靭は弁護団がついてるもんね」
内海が言った。
「パスポート取り上げられて、家から出ないって条件らしいけど、前科もないし、ベンが善人だってことは誰もが口をそろえてるしさ」
ジミーが補足する。
「だけど、いくら強靭な弁護団でも、ベンの無罪を証明できる確固たる証拠が何かがないとなあ」
良太は眉を顰めた。
「そうね、何か奇跡でも起こらないと。証拠の扱いが間違ってましたとかって、控訴棄却されるとか」
内海の言葉にジミーが苦笑する。
「それ、ドラマの見過ぎ」
「ベンは無罪だって方向で捜査しないと、冤罪だったら冗談じゃないよ」
良太は工藤の事件の際に、千雪が言ったことを思い出した。
警察は初動捜査の段階から工藤がクロだというシナリオを元に捜査しているから、事実とはかけ離れていく。
工藤がシロだという前提で捜査しないと、事実は見えてこない。
「警察はもう捜査打ち切ったのかな」
ぼそりと言った良太に、「この街は犯罪で溢れかえってるからな。起訴したらもう次の事件に向かってるんじゃないか」とジミーが言った。
だったら、数か月後の裁判で勝つか負けるかでベンの今後が決まってしまうってわけか。
「俺らにも召喚状くるかもよ」
ジミーが言った。
「俺、その頃東京だよ。まあ、仕事でちょくちょく行ったり来たりするけど」
ここに千雪さんでもいたら、何とかならないだろうか。
例えば、真犯人を見つけるとか。
思い立ったらというわけで、良太はその夜、十時になったところで、ビデオ通話で千雪を呼び出した。
「どないした?」
何回か電話しないと繋がらないだろうと思っていたところが、一度目で千雪が画面越しに聞いてきた。
東京は今、午前十一時頃だろう。
千雪が素顔なので、おそらくいつものコスプレをする必要のない場所にいるのだろうと、良太は手っ取り早く、実は事件が起きて千雪の知恵を借りたいと切り出した。
「事件? どんなんか言うてみ」
名探偵の異名を取るくらいな推理作家は、事件と聞くとやはり気になるようだ。
良太はネットプライムの社内で殺人事件が起き、撮影中のドラマの主演俳優が手にナイフを持って血まみれの状態で被害者の傍らにいるところを、共演者のレイチェル、それに良太とジミーが出くわしたのだとかいつまんで話した。
「研修先の社内で殺人事件起きたんか、そらまたおもろい、いや、災難やったな」
「あえて言い直さなくてもわかってますから。とにかく、ベンとはこの研修で会っただけですけど、いろいろ話したりして、どう考えても人を殺すような人間じゃないんです」
「お前、人には表裏があるんやで? 人間の本性なんてそうそうわかれへんわ」
「そうかも知れませんけど、俺はベンはそんな人じゃないって思うんです」
良太はむきになって言った。
「根拠は?」
「勘、です」
すると千雪は「勘、て、ドラマのベテラン刑事でもいわんわ」と呆れた顔をする。
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