「柏木かどうか怪しいもんや。第一、ボールペンに携帯? 私は柏木ですって遺体が宣言しとるようなもんやろ。それにこの二人、体型が似とる思わんか? もし柏木があらかじめ長岡の血液型も知った上で仕組んだんやとしたら、うちには長岡がおったわけやし」
「だけど千雪さん、長岡さんの歯型でわかるんじゃないですか?」
良太が反論する。
「それがな、長岡友子って名前の人間はとうに亡くなってる」
答えたのは山倉だ。
「え、ほんとに? 何かサスペンスみたいになってきた」
森村が興奮して言った。
良太はこの展開に何やら背筋がゾゾっとする。
「どうやら近年ロスから来た日系人女性じゃないかと」
山倉が頷きながら言った。
「はっきりしたことはわからないが」
その時、「あ、上司からだ」と森村がポケットから携帯を取り出した。
「ウソ……」
画面に表示されたメッセージを読んだ森村がしばし絶句する。
「篠原孝蔵が逮捕されたって。手島と柏木弁護士殺害容疑で」
それを聞くと、良太はすぐにテレビをつけた。
すると、ニュースの時間ではなかったが、篠原孝蔵が逮捕されたというテロップが画面の上に流れていた。
「警察もえらい思い切ったな。ひょっとして、前から目ぇつけられとった腐ったミカンを早いとこ始末してまお、いうやつか」
千雪は皮肉たっぷりに言った。
「工藤さんに火の粉がかからんかどうかが気になる」
それを聞くと良太は無暗にチャンネルを変え、ニュース番組が映し出されると音量を上げた。
『篠原容疑者は薬物銃器対策課長という役職にありながら、長年に渡り、押収した薬物を手島建設株式会社社長手島尚嗣らに横流ししていた疑いで内部調査が行われていたが、この程篠原容疑者がその事実を認めたため、警視庁は逮捕に踏み切ったということです』
アナウンサーが読み上げた内容は警視庁にとっても由々しい問題であり、警視総監をはじめとする幹部二人の平身低頭のようすが画面に映し出された。
『尚、手島社長殺害においても、事件現場から篠原容疑者のものと思われるボールペンが見つかっており、さらに手島社長が殺されたと思われる時刻に、本来なら函館中央警察出張中であるはずの篠原容疑者をホテルの裏まで乗せたというタクシー運転手の証言などにより、部下には函館にいることにするようにと言い含めて京都にいたことがわかっており、殺人の疑いで調べを進めています』
画面には手島の顔がアップになり、殺害現場となったホテルがローアングルで煽って映し出された。
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