月鏡47

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「いいのよ。百パームリでも、夢を見るくらいいいじゃない!?」
 白石は本当に夢見る乙女のような表情で口を尖らせた。
「あ、ごめんね、ありがとう。猫ちゃん、可愛いわね!」
 やっと携帯を握ったままなのに気づいて、白石は良太に返した。
「あ、いえ………」
 ってか、これってどういう事態なわけ?
 良太の頭の中で思考がまだ彼らの話について行っていないのだ。
 目の前の白石さんって、どうみてもいかついオッサンだけど、中身は乙女????
 いや、テレビ局に出入りしている人は数人知っているけど、いや、ここまでギャップが大きい人は初めてだし、しかも身近にいるとかって………。
「ごめんね、良太。びっくりした? でも、これが本当のあたし。こいつらの前だとオッサンのふりしなくていいから、楽なのよね」
「フリじゃなくて、立派にオッサン」
 山倉が茶々を入れる。
「うるさいわね!」
「でも生きにくいよね。マイノリティの生存権は何とかアピールできても、人と違うってだけで、攻撃してくる連中もいるし」
 真面目にそう口にしたのは檜山だった。
「仕方ないわよ。こんなオッサンが、あたしがあたしがなんて言ってたら、誰だってキモイって思うわよ」
 急にしんみりと白石は肩を落とす。
「バアカ、キモいとか思ってたら、俺らダチなんかやってねぇだろ! もう高校ん時からだぞ!」
 加藤が声を張り上げた。
「わかってるわよ。みんなには感謝してるし、大事な仲間よ!」
 今度は泣きが入りそうになる。
「ああ、もう、しけた話はもうナシだ! お前ら、マイノリティだのなんだの、考えすぎだってぇの! 自分の思うように前に進めばいんだよ!」
 そこへ活を入れたのは京助だがすぐさま千雪が抗議する。
「世の中、みんな、お前みたいな超ポジティブに進めるやつばっかやないいうこっちゃ。ていうか、考えなさすぎやろが」
「クサそうだのキモイだの言われまくって、コスプレして楽しんでるような変人が何を被害者面しやがって」
「誰が被害者面や!」
 こっちでは声高に内戦が勃発し始めたのを見て、「ちょ、二人ともヒートアップしすぎ! ホテルから苦情きますよ」と良太は二人をマニュアル通りな言い方で宥めにかかる。
「ああいう、ごり押しな開き直りカップルみたくうまくは行かないよな。俺、片思いの男がいるんだ。淳史と似たり寄ったり」
 良太のこちら側では、ワインをゴクゴク飲みながら、檜山が白石を捕まえて告白すると、白石が「え、そうなの? 苦労するわね、お互いに」と相見互い、頷き合っている。
 あちらでは、山倉や加藤が焼酎の飲み比べをやっている。
 いやあ、もうかなりみんな酔っているってことだよな。
 良太はもう何も言うべき言葉がみつからない。
 シルビーは皆から離れたところにあるペットベッドで丸くなっている。
 すると辻と目が合い、辻がおいでおいでをした。
 良太は立ち上がり、辻のところに歩み寄った。
「こいつら、これ以上羽目外すこともないやろし、明日も早いんやろ? もう部屋戻って寝た方がええで」
「え、でも………」
 確かにもう真夜中を軽く超えている。
「あとは勝手に寝るやろ。ほっとけ。部屋まで送るわ」
 良太は辻の言葉に従うことにした。

 


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