霞に月の44

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「相変わらず不愛想な顔してるね~」
「は、お前こそ、相変わらず遠慮ってものを知らない言い草だな」
 明らかに二人は昔からの付き合いというようすで言葉を交わしている。
「香坂先生、工藤さんご存じなんや?」
「ああ、高校の時のクラスメイトなのよ。工藤高広」
 千雪に問われて、香坂は大学の仲間らにサラリと説明した。
「工藤さん、ほな一応、今、アメリカから法医学教室に来てはる香坂准教授と宮島研究室の小野寺さんです」
 千雪は二人を工藤に紹介した。
「高広は今何やってるの?」
「香坂先生、俺の小説映画化してくれはったプロデューサーです、工藤さん」
 工藤の代わりに千雪が説明した。
「え、てっきり弁護士かなんかと思ったけど。確か法学部じゃなかった?」
「まあな。お前、医者じゃなくて、法医学か? らしいっちゃらしいな」
 工藤の話し方から、良太は香坂に対してひどく好意的な印象を受けた。
「うちの高校、帰国子女とか海外からの赴任組の子が通うミッション系で、中学高校一貫制だったんだけど、高広、高校から入って来て、入った途端、この図体と不愛想な顔で目立ってたのよ。いきなり成績一番取るし」
 香坂が思い出し笑いをしながら当時の工藤のようすを語る。
「高校ん時から、こんなんやったら、誰も近寄らんかったでしょう」
 千雪が茶々を入れる。
「そうね、群れなかったわね、最後まで。女子にはもててたけど。ほら、加絵とか、かなり積極的に言い寄られてたじゃない」
 なるほど。
 でも加絵さんより、香坂さんの方がずっといいかもな。
 良太はじっと二人を見つめながら、香坂を値踏みした。
「ああ、うちの広瀬だ」
 すると工藤が良太を読んだ。
「え、あそっか、青山プロダクションって高広の会社なんだ? 良太ちゃんってプロデューサーなの? 可愛いから俳優になればいいのに」
 うわあ、香坂先生まで、工藤の前じゃ禁句だってそれ!
 良太は内心慌てる。
「いや、とんでもない、俺なんて」
 ってか、既に良太ちゃんかよ。
 周りがそう呼んでいるから仕方がないとはいえ、いっぱしの社会人のつもりなのに、と良太はちょっとがっかりする。
「適材適所だろう。こう見えてもう番組をいくつか持ってる」
 えっと良太は工藤を見た。
 今工藤に初めて、ちゃんとした紹介をしてもらったような気がする。
「藤原さんといるのもうちの秋山だ」
「え、あのエリートっぽい彼も?」
「フン、うちのようなちっぽけな会社には出来過ぎる人材だ」
 ああ、それは認めますけどね、秋山さんは。
 さっきちょっと喜んだのもつかの間、良太はどうせ俺はね、工藤にはその程度の存在ですよ、と内心拗ねて斜に工藤と香坂を見やる。
 その時良太は、またおいでおいでをしているひとみと目が合った。
「なんですか?」
 香坂は好印象だが、やはり二人が仲良さげなのをあまり傍で見ていたくないなと思っていた良太は、そそくさと宇都宮や天野といった俳優陣が集う方へと歩み寄った。


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