「ひとみさんだって来てるじゃない!」
このちょっとしたハプニングにひとみが気づいて、「あら、アスカじゃない、来てたんだ?」とひらひら手を振った。
「秋山さん、も、しょうがないですよ。向こうは竹野紗英さんです」
慌てて彼らに歩み寄った良太は、料理のテーブルの前にぽつりと立っているもう一人のメガネの女性を目で示した。
「ええ?」
さすがに秋山も紗英までとは思いもよらなかったようだ。
「すみません」
てへ、っと笑って紗英も眼鏡を取った。
案の定、二人が人気俳優の中川アスカと竹野紗英とわかると、あちらこちらから声がかかった。
さすがに平均的に年齢層も高く、落ち着いた大人がほとんどなので、大きな騒ぎにはならなかったが、男性陣は大いに興味をそそられたようだ。
「紗英さん、ったく、スケジュール詰まってるんじゃなかったんですか」
良太は呆れ顔で紗英に尋ねた。
「空けてもらったんだもん。いいじゃない、たまには。ほら、スキーとかだって行きたかったのにさ。なんかみんな楽しそうだったみたいじゃない」
忙しすぎる竹野には、良太も同情しないでもないのだが。
「ねえ、あそこにいる長身のカッコいい人って誰?」
唐突に竹野が良太の耳に囁いた。
「ええ? どなたのことです?」
「ほら、チャイナドレスの人の横にいる」
良太がチャイナドレスの理香を振り返ると、スーツがビシッと似合う長身の男と笑い合っていた。
「ああ、あの方は確か、京助さんの従兄さんじゃなかったかな」
「ってことは、綾小路一族?」
紗英がまたこそっと聞いてくる。
「まあ、そうじゃないですか?」
「なーんだ。ちょっといいかなって思ったのに」
「紗英さん、ああいう人がタイプ?」
笑みを浮かべて良太は聞いた。
「だって、ワイルドでカッコいいじゃん」
「お医者さんみたいですよ」
「フーン。残念」
「なんで?」
「だって、ああいう由緒ある一族とかって、メンドウそうじゃない? いろいろ」
「まあ、どうなんだろう。家とか家族って、いずれにせよメンドウだったりしますよね」
良太が紗英とコソコソと笑い合っているのに気づいた千雪は、視線を工藤にやった。
どうやら工藤も少しは良太のことを気になっているらしく二人を見ていたが、すぐにまた香坂や挨拶をして回っている紫紀と小夜子夫妻に向き直った。
良太がホールを見回すと、加藤や辻は理香や速水、浜村らと歓談しているし、研二と匠は綾小路一族の医師、長樹や大河内由樹らと楽し気に語らっている。
思い付きで開催した異業種交流会だが、それはそれでうまくいったようだと、良太は思った。
森村は小野寺とずっとえらく熱心に話し込んでいる。
やはり自国の言葉で話ができるのが一番いいのかも知れない。
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