霞に月の49

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 佐々木は公一が連れてきた女性陣にアイドルのように囲まれていろいろ聞かれているようだ。
 藤堂や直子、三田村とバルツァーは、佐々木軍団の傍でそれぞれ笑いあっている。
 アスカは秋山と宇都宮や天野、ひとみや下柳、須永らと飲みかわしているが、秋山と一緒にいられれば落ち着いているのだ。
 秋山はまだそれがわかっていないらしい。
 工藤は相変わらず香坂や紫紀夫妻と何だか楽しそうに見える。
 ふーん、そうなんだ。
 交流会も成功だが、工藤と香坂をくっつける計画も成功みたいじゃん。
「ねえ、良太」
 ぼんやり考えごとをしていた良太は、紗英に腕を引かれてハッと我に返る。
「どうしたのよ?」
「え、いや………」
「ねえ、この会十時まででしょ? この後飲み行こうよ」
「ええ? 紗英さん、明日のスケジュールは?」
 つい、仕事の顔になって良太は聞き返した。
「大丈夫。午前中はオフにしたから」
「ってか俺、明日も仕事なんですけど」
「いいじゃない、ちょっと飲むくらい。アスカちゃんは誘わない方がいいみたいね」
 紗英がアスカと秋山を見て言った。
「アスカさん明日早いから、早々に秋山さん連れて帰ると思いますよ」
「そっか。宇都宮さんとか、ひとみさんとか誘ってみようか」
「ええ? ひとみさん、うわばみだからなあ」
 紗英の提案に良太は怪訝な顔をした。
 それから間もなく会はお開きとなり、玄関の車寄せには迎えの車や、あらかじめ藤原が利用すると答えたゲストの台数分呼んでおいたタクシーが列をなしていた。
 良太は後の方で帰ろうと、招待客が帰っていくのを見送っている藤堂の横で招待客に挨拶していた。
「すみません、良太さん」
 振り返ると森村が小野寺と一緒に立っていた。
「どうかした?」
「あの、彼女、送ってってもいいですか?」
「え、いいよ。俺に気を使わなくても」
「ありがとうございます。じゃ、お疲れ様でした」
 よほど気が合ったのだろう。
 小野寺も笑顔でひらひらと良太に手を振った。
 うーん、確かに、成功って言えるかも。
 二人がタクシーに乗り込むのを、良太は納得の表情で見送った。
「モリーも彼女と上手く行くといいね」
 藤堂がこそっと良太に言った。
「ですね~」
 その時、「良太」と呼ぶ声に良太は振り返った。
 初めてじゃないのか? 今夜、俺に声かけたの。
「はい」
「すぐに帰るか?」
 工藤に聞かれて一瞬戸惑った。
「えっと、紗英さん、一人で来てるので、送って行きます」
 だから工藤さんも香坂先生を送って行ったらどうですか、とでもついでに言ってしまいそうになる。
「そうか」
「ねえ、高広」
 紫紀夫妻に挨拶していた工藤を帰りかけた香坂が呼んだ。
「来週、どこかで時間とってよ。ご飯食べよ」
 ざっくばらんな香坂は、良太も好印象だ。
「ああ、だが、いつになるかわからないぞ」
「連絡して」
 工藤が関係なければね。
「ああ」
 なるほど、着々と進展しているってわけか。
 何だか急に、いてもたってもいられなくなった良太は、たったかトイレに向かった。

 


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