霞に月の51

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 まあ、わからないでもない。
 交流会でもちょっとアイドル気味に女の子に囲まれてたもんな。
 良太は一人頷いた。
 あれだけの人数だからまだよかったようなものの、直子がオフィスにかかってくるマスコミ関係者の佐々木への取材申し込みの対応に追われていると、ラインしてきた。
 中にはオフィスまで押しかけてくる傍若無人な輩もいるという。
 仕方なく、オフィスを閉めた形で仕事をするしかないと直子はこぼしていた。
 不意に小林千雪がコスプレせざるを得なかった痛切な理由も、良太は改めて納得した。
 交流会での香坂准教授や小野寺とのやりとりから察するに、千雪はどうやら学内の人間には眼鏡におじさんジャージで通しているらしかった。
 まあ、やはり千雪さんはそれが無難なのかも。
 小林千雪の本性が知れたらマスコミも大騒ぎだろうな。
 そう言えば千雪の担当編集者の多部は、気配を消していろんな相手と話していたが、何というかミステリーのキーパーソンになりそうな雰囲気だった。
 そんなことを千雪に言うと、それ、おもろいな、と目を輝かせてたから、そのうち小説に登場するかも。
 交流会のあとの六本木のバーでのことを思い出すと、良太はもう金輪際酒は結構だと言いたくなる。
 何しろ、宇都宮とひとみ、それに竹野に加えて天野がまたウワバミだった。
 良太は須永と二人、飲み過ぎで潰れそうになるのを必死でこらえていた。
「准教授だか何だか知らないけど、あんな女に負けちゃダメよ! 良太ちゃん!」
 そうとう酔っていたし、竹野や天野にはひとみのこの発言内容が何のことだかわからなかっただろうと思いたい。
「だいたい、セレブ一族ってのは鼻持ちならないのよ!」
 竹野は竹野で、以前、ある御曹司と付き合ったことがあり、実家のクリスマスパーティに招かれた時に、家族から親戚からいろいろ聞かれてウンザリした、というようなことをぶちまけていた。
「それで長樹さんのこともそんな風に考えたんだ」
「そ。ほんと、タイプだったんだけどさ、残念!」
 酔っているから何を言っても仕方ないだろうが、セレブとひとくくりにはしない方がいいと良太は思う。
「それで? 良太、誰と付き合ってんのよ?」
 しかも竹野の絡みは面倒な方へと向いていた。
「私をごまかそうたって無駄よ! 知ってるんだから! いつだったか襟もとに動かぬ証拠、見たんだからね!」
 その言葉に良太はヤバいと、思わず首筋に手をやった。
「紗英さん、目がすわってるし、かなり酔ってるでしょ」
 慌ててごまかした良太だが、他の面々も酔っているらしく紗英の発言を気にもしてもいないようだった。
 天野は静かに酒を飲んでいて、たまに宇都宮やひとみと演技の話などをしたりする時の口調は熱がこもっていた。


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