「今はとにかく何でも吸収している時でしょ。あーあ、俺も天野くんくらいの年までもタイムリープしたいよ」
宇都宮がぼやくと、「やめてよ。トシちゃんまで。これからじゃない!」とあくまでも強気のひとみが言い切った。
そのうち竹野は良太にもたれて眠り始めた。
スケジュールがタイトなのに、無理やり交流会に出たり、酒をがぶ飲みしたりで、さすがに疲れが出たのだろう。
「竹野さんと付き合ってるんですか?」
いきなり天野が良太に聞いてきた。
「まさか、とんでもない!」
良太はきっぱり否定した。
「いや、なかなか俺ら出会いってないから。どうしても付き合うってなると共演者とかになるんだろうな」
「天野さん、付き合ってらっしゃる方いるんですか?」
最近、ぐんぐん人気が出てきた天野に恋人がいたらファンが嘆きそうだ。
「ぜんぜん。俺、この通り強面だし、無愛想だし、周りからワンクッション置かれてるっていうか、ダチも少ないし」
天野が苦笑して首を横に振った。
何だか、わりとみんなが森村状態なのかも知れないと、良太は思った。
そんなに簡単に相手は見つからないのかも知れない。
最近パートナーや恋人がいる若者の確率が低くなっているなどという噂も聞いている。
「天野さん、みんなから憧れられる人だと思うのに」
「うーん、俺の芝居をいいって思ってくれるのは有難いけど、俺自身は別物だし」
「あらあ、天野くん、これからビシバシ、飲み、行こうよ」
かなり酔いが回ったひとみが話に割り込んできた。
「ひとみちゃん、潰れる寸前だな、こりゃ。そろそろお開きにする?」
宇都宮の一言で、店を出てタクシーを拾う。
「仕方ないな須永くん、俺も一緒に行くよ、ひとみちゃん、部屋に連れてくの大変でしょ」
須永はありがたく頷いて、ひとみと宇都宮が後部座席に乗ると、助手席に乗った須永が「お疲れ様でした」と良太に挨拶してタクシーは走り出した。
「天野さん、お送りしますよ、家、どちらでしたか?」
辛うじて立っている竹野を抱えた良太が尋ねると、天野は「三軒茶屋です」と答えた。
タクシーに乗り込んだ竹野は半分寝ていたがマンションに着いて、玄関先まで良太が送っていくと、「もう大丈夫。お疲れ様」と言ってコンシェルジュの横を通ってエレベーターまで歩いて行った。
良太は、それを見届けるとタクシーに戻り、今度は天野を送っていくつもりだったが、天野が先に「乃木坂から三軒茶屋お願いします」と運転手に言った。
「え、天野さん」
「俺、かなり酒強いんで、全然平気です」
そう言われても、良太としては、はい、そうですか、とは言い難い。
須永には前々からタクシー料金は会社に請求してくれるように言ってあるが、ひとみを送り届けてくれるという宇都宮には甘えてしまっているところがあるのはわかっているから、また何かでお返しをしようとは思っている。
「そうだ、差し支えなければ、ライン、いいですか?」
天野が言うので、良太も「いやこちらこそ」と連絡先の交換をした。
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