霞に月の59

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「絶対あの准教授のせいよ」
 アスカは断言した。
「准教授?」
「わかってるくせに。交流会の時にいたじゃない、香坂准教授。工藤さんの高校のクラスメイトよ」
 もちろん秋山もわかっていた。
「工藤さん彼女と会ったんだって。ユキから聞いたのよ。良太はだから反旗を翻してるのよ」
「ただの高校の同級生じゃないですか。随分久しぶりみたいだし会ったりもするでしょ」
「フーン。そういえば、秋山さんも高校の同級生と会ったよね? スキーの時」
 アスカはちょっと例の佐藤のことを口にしてみた。
「覚えていたんですか? 俺も随分久しぶりでしたが、彼女が懐かしがってくれたほど、俺はもう地元には何の思い入れもないですからね」
「そうなんだ。でも工藤さんはわからないわよ。いつも鬼みたいな顔してる工藤さんが香坂准教授とはメチャ楽しそうに笑って話してたのよ」
 秋山もそれに気づいていた。
「あの人はただでさえ友達が少ないですからね。たまに古い友人に会ったら飲みに行くくらいしますよ」
「工藤さんはそうかもだけど、香坂准教授の方はどうかな。彼女絶対、工藤さんに気があるわよ」
 アスカは眉を寄せる。
 秋山もそれは否定するつもりはないが。
「要は工藤さんの問題でしょうが」
「だって、良太完全に避けてるとしか思えないわよ。工藤さんのスケジュールに合わせていない時にしかオフィスに現れないし」
「だから忙しいんですよ。ドキュメンタリーの出演者がこの一カ月しか日本にいないとかって人もいたりで、詰めて撮影しているようですから」
「フーン。まあ、それもあるんだろうけど。また良太の機嫌を損ねたら、この会社ガタガタになっちゃうわよ。何とかならないの? 秋山さん」
「俺に振られても」
秋山は一つ溜息をついた。
「わかりました。少し様子を見てから、膠着状態が続くようなら、何か考えましょう」
 途端にアスカは目を輝かせた。
「さすが、秋山さん」
「さあ、そろそろ出かけますよ」
「はーい」
 とりあえずアスカを宥めるために何か考えるとは言ったものの、これまで何度もいろいろあった二人のことだ、差し当たって秋山もうしたものかというところだった。
 少し様子を見て、まず工藤さんに確かめてみるか。
 秋山は一人心の中で呟いた。
 だがちょっと気になるのは良太だった。
 何を考えているのか。
 アスカが口にするまでもなく、秋山は交流会の後から工藤と良太のようすが何となくおかしいことには気づいていた。
 やっぱとにかく工藤さんだよな。
 あの頑固者、いい加減素直になればいいのに。

 


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