霞に月の7

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 案の定、現地でトラブったとかで工藤の帰国が伸び、花見に間に合わないかもと良太は心配していたのだ。
 のしかかられた重みに良太は寝入りばなを起こされたのは真夜中過ぎのことだった。
「な……んだよ………」
 夢うつつに唇を塞がれ、息ができなくて良太は目を見開いた。
 ベッドの上に寝ていた猫が驚いて飛び降りた。
 工藤の胸を拳で小突くと、やっと唇が離れて行く。
「だから窒息する……」
 口では文句を言いつつも、良太の心の中では帰ってきたんだ、と安堵している。
「待ってたんだろ」
 良太の胸を弄りながら色悪のように言うと、工藤は良太を押し倒した。
「わ、酒、入ってるだろ、工藤……」
 こうなると抗議もくそもない。
 手早く脱がせた良太の身体を軽く下拵えすると、工藤はメインの料理に取り掛かる。
 二つの猫はベッドの上で息も荒く絡み合って蠢く男らに近寄るまいと、自分たちのベッドでくっついて目を閉じた。
 工藤の腕の中でバターのように溶けだした良太の身体は熱く滾り、わけのわからない声をあげながら、悦んで戦く。
 やがて意識を手離した良太の唇に、工藤は一つキスを落とした。

  

「え、今夜ですよ、花見」
 翌朝九時に身支度を整えた工藤は、これから名古屋で藤田自動車CEO藤田と会う、今日中に帰るかどうかわからない、という。
「新幹線で帰ってくればいいじゃないですか。ちょっとでも顔を出してください」
 出かけていく工藤の背中に、良太はムキになって言い放った。
「わかったわかった」
 工藤はどうでもよさげな返事をして部屋を出て行った。
「ちぇ、何だよ」
 これじゃ、アスカの予言通り、今夜の宴は工藤が帰るのかやきもきしながら上の空ってことになりかねない。
 せっかく、あんなに潔く咲いたのにな。
 良太の部屋からも裏庭が見下ろせる。
 工藤が桜を避ける限り、亡くなった恋人を追い求めているように感じてしまう。
 実際、そうなのかもしれないけど。
 ちぇ、ともう一度良太は口にすると、ご飯をやっていた猫たちを撫でてから立ち上がってモソモソと着替えを始めた。
 テーブルの上に置いた携帯をポケットにしまおうとした、その時だ。
「え…………」
 携帯の横に小さな箱が置いてあった。
 外国製の箱にはリボンがかかっている。
 開くと、タイバーが入っていた。
 ポールスミスのロゴが見える。
「ちぇ、俺の誕生日過ぎたもんだから慌てて用意したんだろ」
 最近よくイベントに合わせてプレゼントをくれる。
「物をくれて、何かごまかそうったって、そうはいくかよって!」
 悪態をつきながらも、ほんのりと嬉しさが胸に染みた良太だった。

 


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