勝手にしやがれ!2

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 それでもまあ、この年末良かったと思うようなことがないわけでもないから、帳消しとまではいかずともその時ばかりは気分は上昇する。
 例えば幼馴染でリトルリーグの頃からバッテリーを組んできた肇と、高校の時、部のマネージャーだったかおりが最近つきあい始めたことだ。
 すまん、と肇に頭を下げられて、かおりとつき合っていることを告げられたのはクリスマスより前のことだった。
 肇は律儀にも高校時代かおりとつき合っていた良太に気をつかったらしい。
 かおりは当時のことを大切な思い出と言ってくれはしたが、そんな深いつき合いでもなく、良太としては最近肇のかおりに対する気持ちを知ってから、むしろ背中を押してやりたいくらいだったわけで、クリスマスは二人で白馬だと肇からメールがきたときは、うまくやれよ、このヤロウ! と祝福の気持ちを込めて返したものだ。
 沢村の話によると、かおりの方はどうやら何を勘違いしてくれたか、良太は沢村とどうかなっていると思い込んでいるフシがある。
 多分に沢村の良太に対する態度のせいだが、違ぁう! と全否定したいところを、あえて誤解を解かないでいるのは、じゃあ、誰なのよ、とでも切り返されても良太にはちょっと答えにくいからだ。
「そりゃ、相思相愛、ラブラブです~、なんて言えるような相手ならな」
 部屋でひとりごちる良太の相手は、今夜も猫のナータンだけだ。
「問題は、その沢村だよな」
 その名前を口にした途端、良太は思わずふうっと溜息をつく。
 沢村のゴシップ記事を編集スタッフが持っていたスポーツ新聞で見たのはクリスマスの朝だったか。
 もはやそのクリスマスですらはるか昔のごとく思えるほど仕事に忙殺されていた良太だが、その時はあんな美人アナとうまくやったじゃないか、と自分のことのように嬉しくなった。
 以前、沢村から告られた時はふざけるなと取り合わなかった。
 お前が行かないからメジャーに行くのをやめたなどという沢村だが、せっかく再会した大切な友人を失くすのも嫌だったから、お前と俺の仲だろなんて茶化してくるのも良太としては流していたのだ。
 リトルリーグからのつきあい、というか沢村のいるチームとは幾度となく対戦し、沢村とはそのたびごとに喧嘩したりする仲でも、ウソがないやつで、いい加減なことが嫌いなやつだとはわかっていたから、余計に沢村には、ちゃんとふさわしい相手と巡り合ってほしいというのが本音だった。
 ところがついさっき、時刻は夜十時を回った頃だった。
 下柳チームでの編集作業の途中、良太の携帯がポケットで震動した。
「…沢村?」
 工藤か、と慌てた良太は携帯に浮かぶ名前を訝しげに見た。
 携帯は尚もしつこくコールしている。
「すみません、ちょっと電話……」
「工藤のやつなら、当分忙しいからかけてくるなって言っておけ」
 スタジオを出る良太に、下柳がからかい半分声をかけた。
「はい、どうしたんだ、沢村」
 良太が曲がりなりにもプロデューサーを務めている『パワスポ』の年明けの番組に出演することになっている沢村だが、よもや彼女とデートで、それをドタキャンなんてのじゃないだろうな、などと良からぬ想像をしながら、良太は携帯に出た。
「忙しいのはわかってる。わかってるが、ちょっと時間取ってくれ」
「お前な……」
 また何を無茶言ってくれるんだ、と思う良太に、沢村が続けた。
「このままだと年明けても浮上できないかも知れない……」
 そんなことを言われれば、良太も本当に番組に支障が出かねない気にさせられる。
「わかった。どこにいる?」
「俺の部屋……」
 良太は頃合を見計らって、番組関係者がトラブりそうなのでちょっと出てくると下柳に断りを入れて沢村の定宿であるホテルに向かった。


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