月鏡7

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「お忙しいところわざわざありがとうございます、小田先生」
 良太は立ち上がって小田を迎え、奥のソファーセットに案内した。
「ここまでお呼びたてして申し訳ありません。ちょっと複雑な事情がありまして」
「いや、こちらが動くことは一向に構わないから、お気遣いなく」
 小田和義は工藤の大学の同期であり、検事の荒木とともに、当時は現役で司法試験に合格し、三羽烏と呼ばれていた。
現在は半蔵門に事務所を持ち、青山プロダクションの顧問弁護士でもある。
 それから間もなく、オフィスにやってきたのは沢村だった。
「おう、沢村、小田先生もういらしてるぞ」
「ああ」
 いつになく神妙な顔をしている。
「さっき佐々木さんが打ち合わせに寄ったけど、お前が言うなってから、今日お前がここに来ることは言ってないけどな」
 ちょっと睨むように言う良太に何も返さず、沢村は奥のソファに座っている小田に歩み寄った。
 沢村が怒りとともに昨夜良太にぶちまけた内容は、複雑というより面倒な話だった。
 実家とはほぼ縁を切っている沢村に、球団を通して兄嫁から電話が入り、ぜひ慈善パーティに出てほしい、母親もぜひにと言っている、と言われ、最近、少し距離を縮めた感がある母親の頼みならばと、沢村が珍しくパーティに顔を出したところ、実際は父親が沢村に取引先の娘を会わせようとしていたのだった。
 父親の策略と知った沢村は、カッと頭に血が上り、今付き合っているのは男だなどと口を滑らせてしまった。
「お前、バカ? もし相手がお前の言ったことをそのまま受け取ってマスコミがそれを流したらどうすんだ?」
 良太はそれを聞いた途端、沢村を詰った。
 無論沢村は佐々木の名前を出すようなことはしなかったものの、数日前、スポーツ紙には、関西タイガース沢村選手が大手企業社長令嬢といよいよ結婚か、という文字が踊り、慈善パーティの晩の二人を捉えた写真が大きくスクープされ、写真週刊誌やネットニュースでも一気に拡散した。

 


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