スタジオでの撮影はあと二日は続く。
『猫の手』に連絡すると、加藤と山倉が入ってくれると言っていた。
「ああ、山倉さん、ADの仕事もしてるからちょうどいいですよね」
帰りの車の中で、助手席の森村が言った。
加えて良太が天野の話をすると、「小宮山さん、要注意人物から容疑者に格上げですね」などと森村は頷いた。
「あと、武蔵野署の件も気になりますよね」
「だよな」
少し策を練るべくコンビニで弁当を買って二人は一旦オフィスに寄った。
「武蔵野署から連絡あったみたいだ」
弁当をレンジに入れ、お茶を入れていた森村がキッチンから顔を出した。
「みつかったんですか? 詐欺の犯人」
「いや、残念ながら手がかりがないそうだ。引き続き捜査はするそうだけど」
良太は鈴木さんのメモを見ながら言った。
「何だ、そう簡単にはいかないってことか」
森村も少し肩を落としつつ、あたためた弁当を窓際の大テーブルに持っていく。
大テーブルに移動した良太に、森村がお茶の入ったマグカップを渡した。
「サンキュ。とりあえず食おう」
「Yep!」
良太は唐揚げ弁当を、森村はかつ丼を黙々と食べ、お茶を飲んで二人は一息ついた。
「社長もきっとやきもきしてますよね、ニューヨークで」
森村がぼそりと言う。
「多分な」
工藤はやはり誰かが怪我を負わされたりしないかということを一番気にかけているのだろう。
香坂が被害にあった時のことがあるし、ライトの落下でひとみさんが怪我でもしていたらと、工藤の心の内を良太は慮る。
「ライトを落としたのが小宮山さんであろうがなかろうが、故意にやったのだとしたら、犯人は誰かが怪我をしたりしても仕方がないと思っているってことだろ」
「下剤もそうですけど、ライトを落とすってこと自体悪質ですよ」
「だな」
「それに、武蔵野署の事件、これももしか同一人物の仕業ってことも考えられられます」
森村がきっぱり言った。
「同一人物でもそうでなくても、同じ頃に起きた事件だから動機は同じって気がする。つまり青山プロダクションに対する妨害工作」
即ち工藤に対する何か恨みつらみみたいなものを持った人物の仕業ではないかと、良太は考えている。
「ですよね」
森村が頷いた。
「加藤さん、隠しカメラ使うって言ってた。小宮山さんのことは重点的に注意するって」
「次何をしでかすかわからないですもんね。飲み物食べ物を配る時はきっちり本人に渡します。コーヒーはポットで配って回ります。下剤だったからまだよかったけど」
「エスカレートして毒物とか冗談じゃないよな。ただ小宮山さんって決まったわけじゃないし、モリー、スタッフさんとかに気を付けててくれ。俺は俳優さんたちに気を配っておくから」
「Copy!」
二人とも少し緊張した面持ちで頷きあった。
「武蔵野署の件、謎の詐欺師って考えて追ってるから、なかなかわからないよな。でも、もし仮に、小宮山さんだとしたら、ベテランの俳優だし、演技力も並みじゃないから、警察を煙に巻くくらい朝飯前かもな」
良太は淡々と口にした。
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