月澄む空に28

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 嫌な予感は当たってほしくなかった。
 森村には二時間おきにラインに連絡を入れてもらっていた。
 日曜の今日は、ドラマでは早朝から吉祥寺にある大学の講堂を借りて法廷シーンを撮っている。
 夜七時を過ぎたところで、食事と休憩時間を挟み、九時から今度は閉店後のカフェに移動して、いくつかのシーンを撮影する予定だった。
「大学の撮影は終わりました。これからカフェに移動します。食事を挟んでカフェの撮影に入ります」
 ちょうど良太の方も一段落ついた頃、森村から携帯に電話が入った。
「今のところは異常ありません」
 それを聞いて良太はちょっとほっとする。
「そうか。あと少ししたら、俺もそっちに回るからよろしく」
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
 上田に挨拶をして、スタッフにも声をかけると、「何、良太ちゃん、これからまたドラマ? どこ?」と下柳が怪訝な顔をした。
「はあ、吉祥寺です。工藤が留守なんで、やっぱ気になるし」
「ほんと、あんまし無理すんなよ?」
「ありがとうございます。お疲れ様です」
「おう、お疲れ!」
 そう言うとこちらもかなり疲労困憊気味の下柳はクルーと一緒にバンに乗った。
 バンが走り出すのを待って、良太も車のエンジンをかけた。
 吉祥寺まで一時間とちょっと、途中、首都高が渋滞らしくナビは東京外環自動車道へと促した。
 「あと三〇〇メートルで………」というデジタルなナビの声に従って良太はウインカーを出して右折ラインへ車線変更する。
 ハンズフリーにしている携帯が鳴ったのは、東京外環自動車道に入ってすぐだった。
「あ、良太さん、今、運転中?」
 森村の声が少し緊張している。
「おう、どうした?」
「あと、どのくらい?」
「三十分くらいか? 何かあったのか?」
 良太の頭に嫌な予感が舞い戻る。
「とにかく、安全運転で、来てください。あ、ひとみさんも天野さんも無事ですから」
 そう言って電話は切れた。
 運転中に話すと俺が事故でも起こしかねないことかよ?
 ハンドルを握る手に汗が滲む。
 そういうのって余計焦るだろう!
 良太はアクセルを踏んだ。
 吉祥寺に入って、カフェへと向かうと通りの向こうでえらく人が出ていた。
 極めつけはパトカーだ。
 何があったんだ?!
 良太は近くのコインパーキングに車を入れると、足早にカフェへと急いだ。
「モリー!」
 パトカーの横から呼ぶと、「あ、良太さん!」と、目ざとくすぐに良太を見つけて森村が駆け寄ってきた。
「実は、みんなで通りの向こうのカフェへ渡ろうと車が通り過ぎるのを待ってたんですが、小宮山さんがこけて車にぶつかって」
「小宮山さんが?!」
 被害にあったのが小宮山とは想定外の話だった。

 


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