江藤とアスカの人気俳優同士の不倫騒動は、不倫動画の日時にアスカにはしっかりしたアリバイがあったことがわかり、俄然動画がフェイクであると取り沙汰されて間もなく、週刊文化芸能編集部編集長並びに文化芸能社社長が緊急記者会見を開き、編集部の担当記者がネタ元をきちんと調べずに不倫疑惑の記事を掲載したこと、さらにネタ元とされた男が今現在行方をくらましていることなどをあげ、江藤の事務所と青山プロダクションに対しては謝罪と損害賠償請求にも応じるとして、また視聴者に対しても平身低頭償っていくとしたが、当然のことながら、ネタ元が行方をくらましていることに対しても、ウソで匿っているのではないかなどとの怒号を浴びた。
記事を掲載したという記者も既に会社を辞めており、こちらも身を隠しているらしいこともわかってきたと、文化芸能社側が江藤やアスカに対して偽の動画や記事を掲載したことに、これが名誉棄損、業務妨害などの犯罪行為にあたるということで各局のニュースでも取り上げた。
「信用毀損罪、名誉棄損罪、偽計業務妨害罪、もうありとあらゆる罪状をつきつけてやりたいです!」
夕方、良太がオフィスに帰ってきたところで、ちょうどニュース番組で文化芸能社の事件を扱っていたので、良太は思いつく限りの罪状を口にした。
「でも、偽記事をリークした男は行方知れずですってよ」
いつも落ち着いている鈴木さんですら、少し強い口調で言った。
確かに編集記者まで居所がわからないというのは、記者会見でも誰かが言っていたように、文化芸能社が隠しているのではないか、という疑惑も浮上する。
何か他に会社としては公にできないことがあって、わざとネタ元を隠しているのではないかと勘繰りたくもなる。
「でも、なんで、偽記事書かせてまで、江藤やアスカさんを陥れようとかしたのかですよね」
夜中、北海道にいる工藤からかかってきた電話に、良太は勢い込んで言った。
「小田は何て言ってるんだ?」
「元ネタを提供したのが坂本という、いつもはどこぞのちょうちん持ち記事を書いているフリーのジャーナリスト崩れだということまでは突き止めたらしいんですが、ほんとにその行方が掴めないみたいです」
「そいつに記事を書かせたバックにいるヤツが何者なのかもわからないのか」
「はあ」
「ったく、何やってんだ! とっとと突き止めろって言っとけ」
携帯はブチっと切れる。
工藤の怒りも分からないでもないが、来月はもうニューヨークなのに、こんな事件を起こしたヤツのお陰で、工藤ともロクに話せないと、良太も沸々と怒りがわいてくる。
ややあって千雪からも電話が入った。
「まず、なんで、江藤やアスカさんがターゲットだったのかや」
千雪も憤慨して声が大きくなっている。
「動機も何も、そのネタ元を見つけんことにはわかれへん」
千雪も進展がなく地団駄を踏んでいるようだ。
ニュースや情報番組ではまだフェイク動画の元の動画が、江藤がモデルのリーナと撮られたものだということまでは公表していないし、知らされていないはずだ。
江藤の事務所が江藤とリーナの画像が元になっていることを公にしないでくれと、青山プロダクションに泣きついてきたからだが、江藤は今回の一件で、あくまでも被害者ということになっている。
「あのクソオヤジ、何が被害者だよ」
帰国した井上がオフィスに立ち寄って、文句を言った。
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