お前にだけ狂想曲12

back  next  top  Novels


「おう、千雪か、元気か?」
 電話の向こう、工藤の声は何だか元気がない。
「はあ、お蔭様で」
 千雪は良太のことが気になってかけてみたのだが。
「何だ? お誘いならいつでもOKだぞ」
「またそんなことゆうてると良太に愛想つかされますよ」
 しばしの沈黙があった。
「工藤さん?」
「ああ、どうやら愛想つかされたらしい」
「え……、どういうことです?」
「言った通りさ。好きな人ができたんだとさ。ってわけだから、千雪、気が向いたら慰めてくれ」
 冗談にもそんな気弱な発言をする男ではなかったはずなのに。
 電話を切ってから、千雪は考え込んだ。
 それとなく土方のことを聞いてみたかったのだが、なにやら聞き出す雰囲気ではなかった。
 ふと思いついて、今度は井上の携帯を呼び出した。
「よかった、つかまって」
「お前から電話をくれるなんて、何だ? お誘いか?」
「お前までアホなことゆうてんな。それより、良太のようすがおかしい、ゆうてたやろ? 原因、わかったか?」
「いんや。俺も工藤がらみじゃないかと思ったんだけどよ、こないだも話したけど、工藤の方にはどうやら心当たりなさそうだし、うーん」
 井上は唸る。
「その、工藤さんと良太、今どないなってるん?」
「どないもこないもわからねーんだけどよ、どうも、しっくりきてないみてーだな」
 彼らは良太が工藤意外の誰かとつきあっているようなことも知らないらしい。
「井上、なあ、土方、って知ってるか? ジャーナリストの」
「土方建造?」
 さりげなく切り出すと、ちょっと硬い声が帰ってくる。
「あの胡散臭いやつか? 政治家を黙らせるネタならわんさか握ってるっていう」
「知りあい?」
「いんや、一言くらい話したことがあるかな。それがどうかしたのか?」
「いや、青山プロでそいつと仕事したっていうことは最近ないんやな?」
「工藤とやつじゃ、ハブとマングースってくらい、そりは合わないんじゃねーの?」
 いよいよもって、良太と接触していた土方が、最近良太がおかしいという原因ではないかと千雪は思い始めた。
 それに、工藤が良太に引導を渡されたという、その原因が土方にあるような気がするのだ。
「これはちょっと調べてみる必要があるな」
 千雪は呟くと、早速部屋を飛び出した。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます