本当は工藤が接待を兼ねて高山に会うことになっていたのだが、出張先で足止めをくらった工藤の代わりに、良太が接待しなくてはならなくなった。
ロケ現場近くの業者が、仕事の邪魔だと文句をつけたため、工藤がその業者にかけ合っているらしい。今夜の最終便に間に合うかどうかも怪しいようだ。
例によって、あとから行くと言っておけとのお達示だ。
「あの部長、酒癖悪いからなー」
実は以前工藤の留守にまだ課長の肩書だった高山に会ったことがあり、良太のことを結構気に入ってくれたのはいいが、料亭の後、クラブやらキャバクラまで散々連れ回された。
「しゃーない、とっとと酔わせて早いとこ送り届けよう」
猫のナータンに、帰るのは明日になるからと言い聞かせ、ドライフードを多めに置いてきた。
もっとも、猫が加減しながら食べてくれるとは思わないけれど。
いつもいつも良太にああしろこうしろと命令してくる工藤は、良太にとって相変わらず多忙な、そしてつれない恋人だ。
いや、恋人なんてとてもおこがましくて、良太は口にもできない。考えただけで赤面ものだ。
「でもさ、俺には健康管理をしっかりしろとか言いながら、ここんとこちょっと働き過ぎじゃねーかな、工藤。もういいオヤジなんだからさ」
そんなことを独りごちながら地下鉄で東京駅に向かう。
ちょうどすぐ発車予定の新幹線に飛び乗ったので、案外早く名古屋に着いた。
半分以上は贅肉だろうと思われる高山部長と、気苦労が耐えないのだろう外山課長はさしずめ冬のきりぎりすといったところだった。
「いい店を見つけたんだよ、広瀬くん」
あらかじめ予約を入れておいた料亭で食事、その後前回一緒に行ったクラブへ連れて行き、これでもう、と思っていた矢先、高山部長が三軒目に行こう、と声を大にしてのたまった。
ようやく高山部長と外山課長をタクシーに乗せたのは午前一時。
「ったく人の金だと思って、飲み放題、イチャコラし放題しやがって」
サカエに行く前に、チェックインしておいたホテルに辿り着き、フロントでカードキーをもらうと、思わず知らずため息が出る。
「人の金だからかー。このご時世だもんな。高山さん、素面だといい人なんだけどな」
三軒目に行った趣味の悪いキャバクラでは、さすがに閉口した。
女の子を選べというが、はっきり言って女の子はどこに? の世界で、もとい、どのお方も遠慮したいと思われるその中で、良太についた「女の子」にやたらしなだれかかってこられて、可愛い、とか言われながら触りまくられて、ひたすら気色悪い思いをしていた。
いや、良太自身、入社してからも借金のために身売りを図った時、鳥肌ものの行為を我慢していたことなんか思い出したりして、それ以上飲んだら悪酔いしそうだったのだ。
とにかくひと風呂浴びてベッドに潜り込みたいよー
工藤のために予約してあった部屋は、ちょっと広めのツインルーム。ドアがバタンと閉まるなり、ベッドにダイビングした。
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