疲れたああああ…
しばらくベッドに沈んでいた良太だが、スーツが皺になる、とようやく身体を起こしてバスタブに湯を張っているうちに、スーツをハンガーに掛け、服を脱いでバスルームに戻る。
湯につかった一瞬の心地よさで、疲れも引いていく。
部活なんかもっとハードだったんだけどな。やっぱ俺もトシってことかなー
温泉とか行きてーよなー。親父やオフクロなんか、温泉街にいるからか、前より若返ったみたいじゃん。
昨年末の怪我で心配かけたこともあり、先日、休みにちょっと両親のところに顔を出してきた。
妹の亜弓もかけつけて、良太が奮発し、久しぶりに家族揃って、その界隈では名の知れたレストランで食事をした。
もともとあまり些細なことにこだわらない明るい一家であるが、いろいろあってここのところちょっとへこみ気味だったのが、笑い声が戻ったみたいだった。
温泉、工藤も一緒に行かないっかなー、なんちって。
ひとりで考えて、ぺちっとおでこを手のひらで叩く。
何か俺って恥ずいー
それにしても、工藤はああゆうヤカラをどうやってあしらうんだろう、などと高山らのことを考えながら良太は長湯をし、ほんわかと身体が温まったところで、バスローブをはおってあがった。
「やっぱ、年の功ってやつ?」
「何がだ?」
独りごとに返事をされて、良太は思わずバスルームのドアに張りついた。
ベッドの横にはネクタイをほどいている大柄な男が立っている。
「び、びっくりさせないでくださいよぉ~、社長…何でいるんですか」
「何でいる、だと? 最終便に間にあって、駆けつけてきてやったんだぞ。携帯にも出ないんで、ここに直接きたんだ」
工藤は煙草をくわえながら眉間に皺を寄せる。
「ちぇ、どうせ来るんなら、もうちっと早く来てくれればいいのに…」
ボソボソ呟く良太をジロリと見据え、工藤は煙草を灰皿に押しつぶすと、さっさと服を脱ぎ捨ててバスルームに消える。
ったく、急に現れるんだから。でも工藤さん、来てくれてちょっと嬉しいかも…。
良太はベッドに放り出してある工藤のワイシャツやズボンをクローゼットの上着の横にかける。
ダンヒルを頓着なく着こなす工藤と比べれば、スーツに着られているような自分はまだまだってことだ。
良太は冷蔵庫からウーロン茶のボトルを取り出してごくごく飲んだ。
工藤がきてくれて安心したのか急に眠気が襲ってくる。
「器用なやつだな。こら、風邪ひくぞ」
飲みかけのボトルを握ったまま、良太はベッドで寝息を立てていた。
工藤はこぼれていないのが不思議なそのボトルを取りあげてナイトテーブルに置いた。
サカエの高山部長は、できれば酒のつき合いは遠慮したい部類に入るのだが、良太も散々連れ回されたのだろう。
普段憎まれ口を聞く唇を少し開きかけたまま、眠っているようすはガキくさいくせに妙に艶めいている。
工藤は戯れにちょっと唇を寄せると、良太が寝ぼけ眼で工藤を見上げた。
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