良太の前に立った背の高い男は、「おや、まさか、こんなところでゴーさんにお会いできるとは」と、親しげに森山に声をかける。
「お前もここ出入りしてるんやったな。そんな嬉しそうな顔したかて、ネタなんかないで」
アスカにくっついて一緒に乗っていた森山は軽快な関西弁で返して笑う。
「いや、ゴーさんにはいろいろ稼がせていただきましたからね」
やがて、エレベーターは地下の駐車場に着いた。
アスカや秋山らを車に乗せ、自分が運転席に回ろうとした時、「あれ、お前…」という声に、良太は何気に振り返る。
どうやらそれは六階でエレベーターに乗ってきた背の高い男だとわかったが、それだけだったので構わないでゴーとマネージャーに挨拶し、車に乗り込んだ。
「ゴーさん、あれ、誰?」
男は良太らの車が出て行くと、マネージャーとごちゃごちゃ言いあっている森山に尋ねた。
「誰、て、アスカちゃんやないか。きれいやけどごっつ気ぃ強いでー、あの娘」
「いや、男だよ」
「マネージャーの秋山やろ」
「じゃなくて、坊やの方」
「ああ、良太ちゃんかいな。青山プロの」
「青山プロ? あいつ、工藤んとこの社員?」
「そうそう。広瀬良太。元気なやっちゃで。年上の女優にもてまくってるわ。すれてなくてかあいーて」
「へえ…」
まさかそんなところで自分が噂されているとは、良太も思いも寄らなかった。
一週間ほどたったある日、良太は一本の電話を受け取った。
「はい、広瀬ですが、どちら様でしょうか?」
土方という名前にも、ましてや男の声にも聞き覚えがなかった。
「ちょっとお聞きしたいことがあるんですが、お時間取れませんか?」
いかにも胡散臭い雰囲気がして、良太は今忙しいので、と電話を切ろうとした。
だが、「まずいことになりますよ」という男の脅しめいた言葉に、良太はムッとする。
「恐喝ならお門違いですよ」
「滅相もない。工藤さんや青山プロとばっちりがかかるおそれがありますけどねー」
とりあえず、あいている時間を指定し、会うことにしたが、何やら嫌な予感がした。
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