お前にだけ狂想曲7

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 男の車で連れていかれたところは、代々木上原にあるそこそこのマンションの一室だった。
 閑散としているのは良太の部屋も同じだが、黒で統一された家具調度はきちんとコーディネイトしてあるのはわかる。
 ベッドルームにでんと置かれたキングサイズのベッドまで黒。
 げー、ここで客取らされるわけ? 俺。
 考えると身体が震えてきそうだ。
 いつものことながら、後先考えず突っ走ってしまった自分が腹立たしい。
「早くしてくれよ。うちでナータンが待ってるんだから、さっさと帰らなきゃならないんだ」
 良太は宣言する。
「何だ、そのナータンてのは」
「俺の猫だよ」
 すっかりタメ口になっている。
 工藤よりは若いだろうけど、年齢がわからない。
「猫ね…可愛いのか?」
「あったりまえだろ? それで客は? いつくるんだよ」
「脱いでみろ」
「え…」
「男が専門ってわけじゃないが、男もいける」
 チクショー!
 良太は潔く全部脱ぎ捨てる。
「さっさと済ませろよ!」
「まあ、そうせかすな」
 土方はまた煙草をくわえて笑った。
 
  
 

 
 
 清々しい五月の風に青々と葉っぱをつけた瑞々しい木立が揺れている。
 だが………………………………。
 窓の外の明るい世界をぼんやり見つめる良太に、ここ数日覇気がない。
 時間を間違えて怒鳴られ、場所を間違えて文句を言われ、いくらなんでもなミスが目立つ。 
 そんな良太のようすには、鈴木さんも心配顔である。
 アスカや秋山だけでなく、たまたまオフィスに顔を出した所属俳優の志村嘉人も尋ねた件とは見当違いの答を返され、困惑した。
 奈々も「何か良太ちゃん、変」とマネージャーの谷川に訴えたりしている。
 アスカなど、また浮気でもしているのだろうと、わざわざ携帯に電話を入れて、工藤に怒鳴り返された。
 みんなが気遣ってくれるのはわかっていたが、こればかりは誰にも言えない。
 先週の土曜、あとちょっとであの男にやられると思って覚悟を決めたその時、運良くあの男の携帯が鳴った。
 土方が飛び出していくと、すぐ、良太は自分の部屋に逃げ帰った。
 その後の呼び出しにはドラマの立ち会いだとか何とか言って切り抜けたものの、今週は否が応でも部屋に来い、と土方からメールを受け取った。
 今度こそ、客を取らされるのかも知れない。
 あいつにやられようと、どんな野郎に何をされようと同じことだろうけれど、やはりものすごく心が重い。
 何がって……………

 


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